こなつ

パレードのこなつのレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
3.8
ヒット作品を続々と送り出している藤井道人監督が、この世から旅立った人々から残された人々への思いをテーマに、長澤まさみ主演で描いたオリジナルのヒューマンドラマ。

Filmarksの皆さんのレビューで知った作品。未練を残して世を去ったため、まだその先に行くことが出来ない人々の物語。

美奈子(長澤まさみ)は、海岸で目を覚ます。息子の良を捜しているとアキラ(坂口健太郎)という青年に出会う。アキラに連れて行かれたところには、元ヤクザの勝利(横浜流星)や元映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)達がいた。そして自分が既に死者になっていること、今いる世界がこの世に未練を残した者たちが集まる特別な場所だと知る。様々な理由でこの世界にとどまっている人々が、月に一度集い、それぞれ会いたかった人を捜す死者達のパレードに参加したことをきっかけに美奈子の心は少しずつ変化して行く。

災害や事故で大切な人が急に居なくなってしまう時、残された者達の悲しみは計り知れないが、死者達もまた未練を残しながら生きている人の幸せを願っているという切ないストーリー。豪華な俳優陣が極力温かく演じている。2022年亡くなられた河村光庸プロデューサーをモデルにしたというマイケルの撮り残していた映画を作りたいという願いに協力しながら、1人1人がケジメを付けて次の世界に旅立とうとしていた。大切な人が亡くなってもなお自分を守っていてくれているような気がする瞬間がある。そんな事を思いながら鑑賞した。

美しい海岸、廃墟の様な遊園地、情緒漂う映画館など死者達の集う場所としてあまりにピッタリで、映像の威力が凄い。遊園地は、「廃墟の聖地」と言われている廃業した宮城県の化女沼(けじょぬま)レジャーランドがロケ地。朽ち果てた観覧車、さびれた遊具、幻想的な映像に引き込まていく。1923年に開業し昨年100周年を迎えた福島県南相馬市の劇場「朝日座」の佇まいは何とも哀愁が漂う。一度行ってみたい。とにかくロケ地が素晴らしいのだ。

佐々木が舘ひろしで、良が奥平大兼、そこら辺は良しとしても、黒島結菜が歳を取ったら木野花になるの?、、ちょっと違和感があった。現実社会の映画館は、渋谷のユーロスペース。インディペンデント作品を上映する映画館として名高い。全体的に監督の想いが凄く詰まった作品なんだと感じる。

主題歌・野田洋次郎さんの「なみしぐさ」。甘く、優しく心に響いた。
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