こなつ

パスト ライブス/再会のこなつのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.0
米国を拠点とする韓国系カナダ人のセリーヌ・ソング監督のデビュー作。監督自らの体験を活かした脚本は、繊細でほろ苦い恋と人生を描いた大人のラブストーリー。

「運命」の意味に使われる韓国の言葉「イニョン」。それは人と人との縁であり、普遍的なモチーフとして作品の中に描かれている。「PAST LIVES」とは前世という意味。アカデミー賞で、作品賞と脚本賞にノミネートされた話題作だ。

冒頭午前4時のバーのカウンターに、アジア系の男女とアメリカ人の男性が座っている。アジア系の男女は話が弾み、アメリカ人の男性には何となく疎外感が漂う。この3人がどのような関係なのか、物語は24年前、12年前、そして現在に至る道のりを丁寧に辿って行く。

24年前ソウルに住むナヨンは、幼なじみのヘソンを残して両親と共にカナダに移住する。12年後名前をノラに変えたナヨンは、ヘソンが自分を探していることをSNSで知り、そこから2人のオンラインのやり取りが始まる。互いの心に恋する気持ちを確認しつつも、それぞれに事情がありなかなか会う事が出来ない。そしてそれから12年後、既にノラが結婚している事を知っていたが、ヘソンはノラに会うためにNYにやって来る。

ノラの夫のアーサーも作家だが、ワークショップで出会い、何となく同棲して、7年前グリーンカード取得目的で結婚した経緯がある。それでもアーサーは凄くいい人で大人だった。ノラを大切に思っている事が良くわかり、ノラも幸せだと感じている。どんなに思っていても結ばれなかった2人もいるし、成行きで結婚しても愛情を育み、幸せになる2人もいる。それがイニョン=縁というものなのかもしれない。

大人の感情の機微が等身大で描かれていてとてもリアル。出会いと別れ、人との縁、運命の理不尽さ、その切なさに心揺さぶられる。過去を引きずるヘソンを見ていると、それならば12年前に思い切って会っていたら、また違ったイニョン(縁)があったかもしれないと思う。

ラスト、色々な思いが溢れて泣き崩れるノラを優しく抱きかかえる夫のアーサーが、素敵過ぎた。
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