似太郎

十九歳の地図の似太郎のレビュー・感想・評価

十九歳の地図(1979年製作の映画)
4.5
いわゆるルサンチマンが主人公の映画。和製『タクシードライバー』であり『ジョーカー』。監督は柳町光男。原作は中上健次。

はっきり言って中上健次の小説は、昔は好きだったけど今はぜんぜん読まない。『枯木灘』とか『千年の愉楽』とか、観念的で泥臭い文体がやや苦手。まだ大江健三郎の方がエンタメ性が高い分、読める。(そうでもない?)

で、『十九歳の地図』だが、これは原作小説より遥かに上出来の作品。新聞配達の少年の憎悪の対象となる家々にイタズラ電話を掛けて「お前の家に爆弾を仕掛けたぞっ」と脅す内容なのだが、これが何とも悪質。

自分だけの地図の中で気に入らない家に✖️マークを貼っていく様は実にオナニー的で痛々しい。中上文学の世界がそのまんま映像化されるとこうも寒くなるのか、と痛感した。童貞臭さ満点。イタタ…。😓

そう言えば、尾崎豊のアルバムで『十七歳の地図』というものがあるが恐らくこの映画が元ネタでは?と思ってしまう。やはり、尾崎豊さんにもそっちの気(け)があったんだね! 分かるような、分からないような…。😅❓

とにかくこの手の「痛い青春映画」が好きなぼくにはドンピシャだった作品だ。全編、瑞々しい映像感覚で紡がれた傑作。
似太郎

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