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素晴らしき哉、人生!のmerrydeerのレビュー・感想・評価

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
3.6
言わずと知れた古典的名作。
それ故に、本作を良しとするにも物足りないとするにもどうしてもクラシックへのバイアスがかかってはしまいます。

現代基準で考えればスリリングな演出やら伏線回収やらがある訳ではないし、モノクロで淡々と進む物語に正直、所々退屈さも覚えたりもしました。

しかし、献身的でありながらも逞しく人生を進めていく主人公が、どうしても立ち直る事が出来ない悲劇的な状況に追い込まれながらも、不思議な存在の不思議な力に助けられ、自分の存在意義を見出し、最後にはそれまでの献身的な行いで報われる。

現実には、自分の置かれている状況が悪くなってしまった時に状況が改善する様な奇跡的な出来事が起こるとも限らないし、フィクションだからこそのご都合主義な部分もあるのだけど、生きてさえいれば状況が変わっていく可能性はきっとあるという希望をフィクションだからこその魅力的な物語を通して抱かせてくれる。
今観ればベタな大円団も余りに無垢な煌めきに満ちていて涙腺に効きます。

映画鑑賞を通して自分の心に響く作品に出会えた時に、何というか自分の心の蟠りが少なからず晴れていったり、救われた気持ちになったりしますが、映画というものがそうした誰かの希望になりうる文化にまで至った重要な原点の一部なのかな、とも思ったり。
いやぁ、映画って本当にいいもんですね。
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