【夢なら醒めて】
堕落した中産階級=落伍者=反社会集団を形成していくプロセスが誠に現代的で哄笑を誘う。トリアー監督らしい意地の悪いユーモアセンスが随所に散りばめられた意欲作。
社会的弱者がさらに社会的弱者を虐めるという構図が、非常に悪質ながら見入ってしまう吸引力がある。どんどんエスカレートしていくイジメが面白い。
本作も障害者差別ネタという意味で『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とほぼ同工異曲のモノである。(こちらは牧歌的なコメディを装っているだけに相当タチが悪い)
ドグマ95形式で綴られる人間の醜悪さとエゴイズムの嵐。本作にはもはや人間らしい感情は何一つとして描かれない。まさしく地に堕ちた現代人の成れの果てといった感じがある。私は動揺した。
全編を彩る手持ちカメラ、ゲリラ撮影がかつての過激な若松プロダクションの作る映画みたいで自主制作感満点。まあとにかく気色悪い内容だが、ちょっと風刺とエスプリの効いた寓話(?)みたいな趣きもありホッとする。
この手の憎悪、悪意系が好きな方にはオススメできるスーパーブラック・コメディの傑作。
今のところトリアー作品では本作と『奇跡の海』が双璧。現代人のゲスぶりをとことん描破した一作となった。