観たかった作品で近いうちにDVDの購入を考えていたが、一連の過去作が劇場公開されている情報を知り映画館で鑑賞する。
ラース・フォン・トリアーが始めたドグマ95の芸術運動は私の記憶が確かであれば初鑑賞である。欧州におけるアンチ・ハリウッドを暗に提言した方法論は建前上は美しく純潔でありながら、皮肉にも中身は話題性を重視した至極猥雑極まりない内容であった。
親族の子息に知的障碍(がい)を持つ身としては、家族の大変さを知っているため不快感のみ。しかし、この怒りは何から生まれどこへ向けるべきなのか具体的な矛先はなかった。
これは飽くまでも主観的な見解であり、過去に友人が障碍者の物真似に愛想笑いをしている自分もいた事実もあり、利益を得ずとも自身もイデオッツ(白痴者たち)の仲間とみられても否定はできない。
この映画で重要な場面は、突然ダウン症の青年が現れて本物の障碍者が登場した時の役者たちの素直すぎる反応と彼らが自然の成り行きで集団乱行(Orgy〈オージー〉)状態になるところである。政治と性を国家が掌握する欺瞞。偽善的な社会を受け入れて性的解放に向かう本来の人間に回帰する描写がなければ評価は低かった。このシーンでは監督自身も全裸になって手持ちカメラを回したとのこと。(村西とおるの影響なのかは不明である。)
出身国であるデンマークは消費税や所得税などの徴収率がとても高く、その財源の大半が福祉制度に賄っているため、政治色が強い風刺画として警鐘を鳴らしているようでもある。
[シネマート新宿 18:30〜]