アー君

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習のアー君のレビュー・感想・評価

3.5
下劣さを極めるという意味においては、学識があるようで無いようなインテリゲンチャ連中が喜びそうな内容だったかもしれない。

「これは見えない閉鎖的な権威に対しての風刺かつホニャララである。」とか書きそうな感じで。

Amazonレンタルで字幕付きをどうしても借りたかったんだけど、何故か見当たらなく泣く泣く吹き替え版を視聴する。声優の方はみなさんベテランで申し分はないけど、仕事のために真面目に間抜けな喋り方をしている印象もあって、もう少し気を抜いても良かったのではないかとは思った。

それでも笑ってしまったところは、食事会のマナー教室でボラット自身の息子の写真を見せたところ。トイレから排泄物をビニール袋に入れて持ってくるシーン。それを真摯に洋式トイレの使い方を教えている女性がいたけど、真面目というか素直に偉いと思ったのはこのシーンであった。

最後に黒人のコールガール(実際はコメディエンヌ)を連れてきたあたりで女性が完全にキレて警察沙汰になったのは当たり前であるが、小生は映画を観ても人間関係を俯瞰的に視聴するタイプであるが、後にも先にも映画鑑賞において感情移入をして女性に心底同情をした場面はこれが最後かもしれない。

宿泊前のホテルでブリーフを丸出しして、窓口で締め出されるネタは、日本でも近い話で当時売れっ子の放送作家が交番の前でズボンのお尻に穴を開けて警官に道案内をしてもらう云々をテレビで観たのを思い出した。

あとはホテル内でのパメラのオカズ事件による相棒との全裸同士の場外乱闘は確かに笑ったけど、下ネタでしか笑えない自分にも問題なのは認めるが、それでも裸になることでしか笑いを取れないのは芸がない証拠でもあるし、踏み込みが足りない感じはしてしまった。

優劣を考えずなければ粒揃いのエピソードが多かったけど、フェミニスト団体の茶化しで盛り上がってきたところで急に他の場面に飛んでしまうところが他のエピソードでも結構目立っていて、全体的な編集カットの間はとても悪かった。おそらくボラットが取り押さえられたり、トラブル後に控えていた弁護士やスタッフが交渉に入ったために削除をしたからこんな変な編集になったとは推測をしている。

基本的なストーリー・ラインになると、アメリカの取材と宿泊先のホテルで偶然観たドラマ「ベイウォッチ」の主演女優パメラ・アンダーソンを探す旅というくだりも、公開当時(2006年)でも少しネタが古い印象はあった。それに紐付けをするフリーマーケットで偶然見つける雑誌や車中のビデオ鑑賞のエピソードもヤラセだと分かってしまったので結構なぐらい醒めてしまった。

ボラットを演じたサシャ・バロン・コーエンは厳格なユダヤ教を家系に持ったユダヤ系イギリス人であるが、英国流ウィットを極端な表現で笑いを追求したかったのだろうけど、高学歴エリートが作りそうなお笑いという代表になると、同郷の先輩であるモンティ・パイソンの影響の強さも感じてしまった。

プロテスタント系のペンテコステ派の集会は貴重な映像資料であった。

後に知ることで一番驚いたのは、英国で自閉症関連の心理学者であるサイモン・コーエンがサシャの従兄弟だったのは知らなかった。

〈国際試合による表彰式で本作用の国歌が手違いで流れてしまった映像〉

https://www.youtube.com/watch?v=MR18Pzbf-nY

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