名倉

リトル・ダンサーの名倉のレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
4.2

OPからEDでのビリーの躍動感のある楽しげなダンスがこの映画の全てを物語っているような気がします。



時代背景がとても丁寧に描かれていて、実話を元にした「遠い空の向こうに」という私の大好きな映画と似たところを多々感じました。どんどんと炭鉱が閉鎖されていく中で、町から一度も出たこともなく炭鉱一筋で生きてきたビリーの兄と父親。炭鉱でしか生きれない彼らの焦りや苛立ちは見ていてとても苦しかったです。



しかしだからこそ、ジャッキーがスト破りをして炭鉱に向かうシーンは涙なしでは見れません。ビリーの兄トニーに対して、「俺たちは終わりだ。でもビリーにはチャンスを与えてやりたい!」と泣き崩れるシーンです。好きでたまらないものを見つけたビリーの一途さと、そのビリーの夢を不器用ながらに応援し、ビリーを愛す家族の姿が非常に感動的でした。



本作は、ジェンダー問題も深く関わっています。そのキーパーソンが友人のマイケルです。男性は炭鉱労働をしながらボクシング、女性はバレエというのが対比として描かれ、ジャッキーもビリーがバレエをやることに露骨に拒否反応を示しています。そんな中でビリーがマイケルから頬にキスをされ、「バレエは好きだけど男に興味はない」と言います。しかしビリーは決してマイケルの事をバカにすることもなく、その後も普段通りにマイケルと接します。



ビリーのフラットなジェンダーに対する姿勢は見ていてとても好感が持てます。映画終盤、ビリーはマイケルとの別れ際に、彼の頬にキスします。それは、性に対するビリーからの返事ではなく、マイケルを一人の友人として特別な敬意を込めたキスだったと思います。その繊細な表現力がこの映画では随所で見られ、この監督の手腕を感じさせられます。



今作は、ビリーが彼の置かれた環境の閉塞感を打ち破るかの様にダンスで自分を表現する場面や、彼の感情が高ぶると同時に始まるミュージカル風のダンスシーンを含め編集や演出に強いこだわりを感じ、そのすべてがこの映画の魅力となって、他では味わえない素晴らしい名作になっていました。



「私のアソコ見る?」



「そんなことしなくても君のこと好きだよ」



イケメン過ぎん????????
名倉

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