雨虎

ドラえもん のび太と鉄人兵団の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

ロボットと人間とのあり方をストレートに描いた作品で、ドラえもんというロボットが登場する作品でもあるため、非常に丁寧に作られた作品のように思う。

個人的にもっと広く知られてほしい部分といえば、リルルと治療にあたる静香とのやり取りだ。リルルはメカトピアの歴史とロボットの素晴らしさを話し、それに対して静香は人間の歴史と同じと言った。もちろん、それ自体も重要な発言だ。
そして、リルルが怒り、襲いかかったが倒れてしまう。静香は「勝手に壊れればいいんだ」「せっかくお友達に」と言うも再び治療をする決心をする。
このやり取りは単に静香の優しさを表現しているのではなく、『のび太の海底鬼岩城』での水中バギーのことを思い出したからこそ、リルルを見捨てるのではなく、助けるという選択をしたのだと思った。実際、その部分のコミックスでは悲しんでいるコマとバギーのボルトを持っているコマは全く同じ構図となっている。

また、この映画の作品として良い部分として、リルルは「今度生まれ変わったら天使のようなロボットに」と言い、ミクロスは「僕も涙が出る装置が欲しい」と言った。リルルもミクロスもあくまでもロボットとして生きていきたいという気持ちがあるところだ。
もし、人間になりたいといった内容を語ればそれはロボットが敵役の映画なためロボット批判、人間賛美にしかならず、この作品での伝えたかったであろうメッセージがなくなってしまう。
そして、静香が人間の歴史と同じと評したことも忘れてはいけない。この作品でのロボットたちの行いは人間がやってきたことをロボットに置き換えて、被害者を人類に見立ててやっているだけにすぎない。この作品でのロボットの行いが良くないものだと考えたのであれば、それは過去に人間がしてきたことは良くないことだったと認識しなければならない。
また、博士が言う進化の方向性を修正する時、他人を思いやる暖かい心をと発言している。リルルが天使となって手伝い、思い描くメカトピアを作るように、私たち人間も今からアムとイムのように他人を思いやる暖かい心を持ち、未来を思い描けば良い未来を作る手伝いができるのかもしれない。
雨虎

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