【『用心棒』より上出来】
(以下は8年前に書いたレビューです。)
ずいぶん以前にどこかの名画座で鑑賞し、最近DVDにて再見。
同じ黒澤の『用心棒』も同じように最近再見したのですが、こちらの『椿三十郎』のほうがよくできているなと思いました。
老獪な三船敏郎と、正義感だけは強いけれど単純で物事を見通せない若侍たちの対照の妙がまず一つ。
奥方(入江たか子)とお嬢様(団令子)の「女の論理」の出し方の巧みさがもう一つ。
途中で捕えられた敵方の侍の使い方のうまさがさらにもう一つ。
進行にも無駄がないし、それでいて独特の滑稽さを含んだ展開が観客の目を離させない。実にうまい。
三船が名を名のる場面は前作の『用心棒』とまったく同じですが、黒澤が『椿三十郎』のあとさらに第三作を作るつもりがあったことを証拠だてるシーンではないでしょうか。つまり、シリーズものに共通のセリフとしての位置づけだったのではないかと。
映像も『用心棒』より保存状態が良好。大満足の一品。