義清

イヤー・オブ・ザ・ドラゴンの義清のレビュー・感想・評価

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舞台は中国の都会なのかと思いきや、NYのチャイナタウン。解説にもあったが、『天国の門』が卒業式で幕を開けたのに対して、これは葬式で幕を開ける。暴力的なのに『ダイハード』みたいにアメリカンな安っぽさはない。『天国の門』みたいに切ない伴奏が流れてる。制作費は3000万ドルだか3000万円だか忘れたが、大金だったという。
タイの奥地の麻薬王の軍隊はすごかった。ジョーンが川に踏み込んだときに、四方の崖から騎馬の大軍が一斉に頭を見せた。麻薬王の集落に整列する大軍も圧巻だった。あんな辺鄙な場所であれだけの人数を集めてロケを敢行するということは、ラクなことではないはず。少なくともエキストラが200人はいただろうか。凝りに凝って撮影が一日にも及べば、1人の日給が1万としても全体で200万かかる。半分でも100万。もっと人件費が安いとしても相当の値が張るはず。
ホワイトとジョーイの決闘の舞台は港湾だった。ロケをするのにも警備上の問題や貨物の円滑な輸送のことを考えると、これまたロケにこぎつけるのに苦労しそうだ。そういえば、鉄道橋の奥のジョーイのシルエットがすごい印象的。周りの青い光のなかに浮かび上がってた。
猪突猛進という共通点が、ジョーイとホワイトに見られる。猪突猛進同士、時期を同じくしてそれぞれマフィアと警察の中心人物として表舞台に立ち、人間の機微を考慮しない姿勢を貫き、互いに火花を散らし、ついには片方が命を落とし、片方は職務を解任された。この2人は、敵対してはいるが、相似形であり、隣り合った平行な道を走る早馬のよう。この描き方に面白みがあるのだと思う。
それから、タイのマーさんの首級を出すタイミング。あれは『ゴッドファーザー』の魚の包みなみに凄い。
明かりを消したマンションの一室で、街の灯に浮かび上がる記者のシルエットの美しさ。
賭博場の煙草の煙。
ホワイトが記者のマンションに家出してきたときの撥弦楽器のBGM。
マフィアの拠点には、写真立てがたびたび出てきた。それをホワイトが手にとってながめる姿はあ、『天国の門』のジムの姿に重なった。『ディアハンター』にもあっただろうか。マイケルチミノのオハコか。
義清

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