荒野の狼

時をかける少女の荒野の狼のレビュー・感想・評価

時をかける少女(1983年製作の映画)
5.0
だって大林監督作品だもの、悪く言えっこないじゃん。それをいいことに、承知で逆手に取った実は巧妙な作品。みんな気づかずまんまと乗せられた。そこそこ有名な監督さんだが、これまでなんら魅(ひ)かれるものが皆無だったので私的第1本目である。実績も知名度もある監督が、えええーこれかよ、と当てが外れた。しかしよくよく考えてみて気がついた。この言ってみれば正直稚拙にみえる作りは、徹底的に計算のうえであり、きっとこの監督は日本映画に心底まじめに絶望したんだろうと深く考えさせられた。おそらくこれまでに数々の名作映画を観てきたであろう彼の理想は当然ながら高すぎたのである。予算的にも俳優たちの技量、顔ぶれを見てもこれじゃあ到底自分にとって満足なものはできっこない。さりとてこの現状に不満や不平は言わぬ温和で優しい性格、その結果考え出したのがこの苦肉の作とも言うべき作品『時をかける少女』。そう考えなきゃ理解できないほどの傑作である。初々しいけど女優としてのオーラも華もない原田知世なんて子供は本来なら使わない。棒読み結構、あえて全てを見限ったところから出発したのだが、瓢箪から駒が出た。知名度では上位に並ぶ故郷尾道という場所が全く魅力的に撮られていない。上原謙•入江若葉、これもわざとだろう。
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