第二次世界大戦、イタリアムッソリーニはドイツ、日本と三国同盟を結ぶが、連合国側に敗れ弱体化したところをドイツに占領される。
この映画はドイツからの解放を目指すレジスタンスの戦いを描く。
撮影はドイツ占領下にナチの目を盗んで秘かにされたとの伝説があったらしいが、実際は解放後の撮影だということがわかっている。
しかし、ナチの目を盗んだ撮影でなくても、解放後すぐの1944年、生々しい記憶の中で作り上げられた映画は緊迫感あふれ素晴らしい映画に仕上がっている。まさにドキュメンタリー・フィルムを見ているような錯覚に陥る。
特にフィルムがなく、期限切れの質の悪いフィルムをかき集めて繋なぎ繋なぎで撮ったシーンが、黒くなったり、ブツギレしてしまうような編集をせざるを得なかったことが逆にリアルさを増している。
#1299
1945年 イタリア映画
監督はロベルト・ロッセリーニ
脚本
セルジオ・アミデイ
フェデリコ・フェリーニ
チェレステ・ナガルヴィッレ
ロベルト・ロッセリーニ
音楽
レンツォ・ロッセリーニ(ロッセリーニの弟)
俳優は数名、あとは素人で撮ったと言われる本作は、脚本も上手く、まったく辿々しさもなく、映画としても素晴らしい作品に仕上がっていると思う。
中でも、英雄のような扱いになる司祭役アルド・ファブリツィが渋くていい。彼は俳優、監督、脚本家、コメディアンをこなしている。
ピナ役のアンナ・マニャーニもいい。一人の子供を持つピナは明日再婚の式をあげる日に悲劇が待っているという悲しい女性の役を演じている。その後のイタリア映画のよく出てくるお母さんのイメージだ。
恋人を追いかけ、彼女が撃たれ、倒れるシーンは「刑事」のクラウディアカルディナーレを彷彿させる。このシーンは名シーンと思う。お母さんに泣きながらすがる子役がものすごく上手い。
この映画では数々のエピソードが生まれているが、まずはなんと言っても戦後イタリア映画史で「ネオレアリズモ」と言われる一大潮流のきっかけとなった映画と言われることだろう。この映画がその金字塔となる「戦火のかなた」という名作を産むことになる。
そして伝説中の伝説。この当時すでに大女優であったハリウッド女優イングリット・バーグマンがこの映画に感動し、妻子を捨てて、監督の下に走ったという不倫伝説。共に既婚者の二人はそれぞれ離婚し再婚するきっかけになった映画なのだ。これは信じられないような本当の話。その後バーグマンは、ハリウッドから長期間干されることになる。
あと一つフェデリコ・フェリーニが24歳という若さで監督に請われて脚本としてこの撮影に参加している。司祭役アルド・ファブリツィと親しかったのがこの縁を作ったらしい。
2023.07.17視聴332