BOB

崖のBOBのレビュー・感想・評価

(1955年製作の映画)
3.8
純真な人々を騙す詐欺師3人組の旅を描いた、フェリーニ監督の人情悲喜劇。

「お前らは人間じゃない。俺にも良心がある。」

ともに"フェリーニの三部作"として語られる『道』『カビリアの夜』と比べるとこぶりな印象は受けるが、本作も傑作だった。

狡猾な詐欺師たちが良心の呵責に耐えられなくなっていく話。人間の良心と人間の残酷さの対比があり、老いと孤独に対する恐怖もあった。ラストシークエンスには、フェリーニ監督の人としての厳しさが詰まっている気がした。

個人的白眉のシーンは、良心の呵責に耐えられなくなりつつあるピカソに対して、年上のオーギュストが詐欺師の在り方を説く場面。光にあたるピカソがオーギュストの影と対話しているかのように演出されていた。思わず唸らされるショットだった。「あんたはどうする。あんたの勇気は一体どこからくるんだ。その年で平気とは。怖くないのか。」この言葉が、オーギュストの考えに変化を与える。

後半にかけて、「崖」を含め、高低差を生かした構図が何度も使われており、人間の善悪の対比が視覚的にも強調されていた。

フェリーニ映画には、人生の教訓となりうる胸に迫る人情ドラマがある。若干説教じみているように感じるときがあることも含め、黒澤映画に通じる所が大いにあると思う。

ジュリエッタ・マシーナが、脇役ながらも『道』『カビリアの夜』と同様、聖母のような良き妻を好演。彼女の表情豊かな演技が好きだ。特に、泣きの演技は格別で、確実に心を掴まれる。

ワンシーンだけ登場するピカソの幼い娘が、可愛すぎた。

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