KnightsofOdessa

パンドラのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

パンドラ(1950年製作の映画)
3.5
[別の物語とは思えないほど合致した現代の神話] 70点

ギリシャ神話の妖婦パンドラと欧州の伝説"さまよえるオランダ人"をドッキングしちゃえという発想は好きだし、その"さまよえるオランダ人"がメイソンだと尚の事だ。嫉妬殺人に巻き込まれても死ねないから死なないという展開は本当に面白い。

本作品は総ての事件を目撃していた考古学者の回想という形で語られる現代の神話であり、カーレースや闘牛といった現代的な要素を持ったパンドラの恋人たちと対比して置かれる3世紀も生きている男として"さまよえるオランダ人"を登場させている。その関係性(運命の男を求めるパンドラと運命の女を求めるメイソン)は別の物語とは思えないほど合致していて、深く納得してしまった。

撮影はパウエル=プレスバーガー作品に関わったイギリスカラー映画界の親玉カーディフなので(IVCならではの低画質ではあるものの)明るく幻想的な世界観が非常に上手く撮れている。浜辺でのパーティのシーンは超現実的なショットも多く好ましい。でもやっぱり一番いいシーンは裸で海を泳いでいったガードナーの場面だろう。奔放さとエロさの双方を象徴するシーンで、これを見せられちゃうとメロメロになっちゃうのも分かる気がする。

ちなみに、メイソンの船が突然現代的なものに変わっているのを訊くのは野暮なんだろう。

追記
にしても浜辺と『ルバイヤート』というと"タマム・シュッド事件"を思い出しちゃうよね。
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