merrydeer

害虫のmerrydeerのレビュー・感想・評価

害虫(2002年製作の映画)
3.0
最近、たまたま目にした記事で言及されていて初見(10年以上前)以来の観賞。

思春期の心の闇、蟠り、衝動、等々その辺りのナイーブだったりセンシティブだったりする感情を抽象的なトーンで描いている感じ。
物語一つ一つを丁寧に描き、不穏な伏線も回収する類の作品ではなく、行間を読む美学みたいなシーンが散見されます。

あなたもあの人もここもあそこも今までもこれからもそして私も全部クソ…という様にまだまだ幼なげな宮崎あおい(同級生役には蒼井優)演じる無口なのに不思議な存在感を放つ中学生サチ子の碌でもない日々が淡々と流れ、救いのないラストへ向かっていく。
とは言え直接的に過激な描写どころか台詞も音楽も作為的に感じる程、少な目に抑えられ、物語を構成する情報そのものが断片的なので、作品にも何とも空虚な空気が流れております。
そんな展開の中で一瞬衝動的に熱を帯びたかの様に自分も心酔しているナンバーガールの名曲I don't knowのイントロのリフレインが挿入される場面は超久々に観ても、最早全てあのシーンの為の長い前振りだったのでは、と錯覚するほどやはり本作のハイライトに思え胸がぐちゃぐちゃになります。

前向きな気持ちを抱けたり、ネガティブな気持ちを解消する様な作品とはとても思えませんが、年齢とか自分の置かれている状況とか、条件次第では心に深く深く刺さりそうな問題作。
自分も何だか古傷が疼く様な気分になりました。
文章がいつにも増して何だか痛々しいのも多分古傷が疼いたせい。
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