雨虎

ドラえもん のび太とロボット王国(キングダム)の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

今作は過去作の『鉄人兵団』とはまた違った人間とロボットのあり方を描いた作品で、テーマとしては「ロボットは人の友だちか、道具か」だろうと思った。

冒頭でロビーという作業ロボットが女の子と遊んでいたところを連行され、改造される。ロビーは帰ってきたが機械的に定められたことを繰り返すだけで女の子は涙を流し母親の元へ行く。この関係性はのび太とドラえもんの関係性と重なる。擬似的にドラえもんが改造されたらどうだろうかという問いになっている。
作品としてはあくまでもロボットは人の友達であるという方向性ではある。例えば冒頭ではペットロボットが欲しいのび太に「僕がいるのに」と文句をいう。しかし「ペットという感じではない」とのび太が言うあたりは、先に結論を出している感じもする。

ジャンヌは父親を亡くしている。感情を持ったロボットが「助けて」と言いエイトム王がかばい、重機の下敷きとなる。そこにデスターにつけこまれ、ロボット改造計画を宣言する。
非常に悲しい経験がこの物語の根源となっている。そして、ジャンヌは国民にも家族を喪う経験をさせているという点も相まって重い内容になっている。
この過去をどう克服するのかという点が見どころではあるのだが、挿入歌が流れ、セリフのない映像でジャンヌが虹の谷で過ごす様子だけという場面がやや簡素なように見え、個人的には物足りなさがあった。
また、デスターは人間であることが終盤で明らかになるが、なにが彼をそうさせたのかという点の描写もやや浅いような気もした。

最終盤、ドラえもんとの唐突の別れという場面は涙が出る。子供たちには少ないだろうが、大人では家族を喪う経験があるだけに、なおさら悲しく感じる。またマリアのセリフのような内容を亡くした家族から聞いただけにまた葬儀のことを思い出す。

地球に帰ってきて、のび太のママ玉子の優しさが光る。短編ではややこしい話もあったが、ドラえもんの母だと言う温かさが素晴らしい。
雨虎

雨虎