"そろそろ目、覚まさないと"
10年間昏睡状態で眠ったままの青年が奇跡的に目覚めたことで崩壊していた家族が新たな展開を見せる様子を描いた人間ドラマ。
出来るだけ台詞を使わずに物語に入っていく導入の仕方と中学生で止まったままのように見える西島秀俊の絶妙さに舌を巻いた。
電動キックボード的な乗り物や嫌がる子供を無理やり引っ張る件の反復とかもどことなく引っかかりや可笑しさがあって良い。
親子ではない二人の距離感を象徴しているようなシーンとして、夜中に二人が目覚めて家の中でウロウロして一度も顔を合わせないところなんかは思わず巻き戻してしまった。
夢の切れ端を繋げたような映像が淡々と続くがゆえ、実はまだ昏睡状態の夢の中なのではと思わせるが、家族の一員として一人の人間として確かに存在していたんだという話の結びがなんとも深い余韻を残す。
離散した家族が揃うのが冠婚葬祭のうちのどれかであったりするというのがやけにリアルで、夢から覚めるように一気に引き戻される気持ちになった。