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リンダはチキンがたべたい!のmarimoのレビュー・感想・評価

3.0
手書きの絵本がそのまま動き出すような表現
絵のタッチ以上に色彩を極限まで省略したフランス製のアニメーション

リンダのかすかな記憶
父と過ごした最後の食卓
父の作ったパプリカ・チキン

悲しい出来事をポップな絵柄で手際良く描く展開に
これは大傑作なのではと期待値

物語の始まりは
リンダの母の大事な指輪が無くなってしまうことから始まる
母にとってはもちろんだがリンダにとっても大事な指輪

ただリンダの話もちゃんと聞かずに
はなから疑ってかかる母親
そして感情に任せて子供に手を上げる

リンダの発言から過去にも似たような状況はあること

シングルマザーの子育てが大変なのは分かるが
この母親…育児不適合者の匂いがします
途中のミュージカルパートで育児ノイローゼの兆候もあるので相当厳しい日々を送っているようにも思える

なんだか苦手なタイプの作品なのではと嫌な予感

しつけとして叔母に預けるという行為
後に分かるのだがこの叔母は本作で唯一常識的な思考を持った人間

周りもこの母親が育児に向いていないことはわかっていたのではないだろうか…
この母親に対する疑念が浮かぶ序盤

リンダの言っていた事が正しいと分かると急に優しくなる母親
これはDVなのでは…
この母親に対する疑念が大きくなる

ここからがタイトルに繋がる展開

母はリンダを疑った事への謝罪で願いを一つ叶えると約束する
「リンダは父のパプリカ・チキンが食べたい」

パプリカ・チキンを作るための”ドタバタ”コメディ開始です

さまざまな要素が別のトラブルの火種になり
またそれが新たな要素として別のトラブルに引火していく
この構成は面白いしリンダのキャラクターも良い

ただしやはりこの母親である

この”ドタバタ”の中でいくつかの犯罪に手を染めていく
それも本人は「リンダのためだから」と悪びれた様子もありません
社会に放ってはダメな人間です

これがフレンチコメディなのか…ごめんなさい笑えない
これは間違った倫理観だぞ
子供に見せたらダメな作品な気がする

登場人物も全員ネジの外れた人ばかりなので
それ見て笑ってねって事なのかもですが
ストライキやシングルマザー
出てくる登場人物たちそれぞれが現在のフランスの世相を表した社会の縮図のようなリアルさがある故に
どこまでをコメディとして笑っていいのかが難しい

フランスは風刺画で社会の皮肉を表現する文化があるので
そのトーン考えるとアニメーションでも同様の方向性なのも頷ける
エンタメと皮肉を切り分けて享受できる文化が出来上がってるのかもしれません

少なくともポップでドタバタで楽しい映像と単純に楽しむには引っ掛かるところが多くて素直には楽しめなかったのが私の感想

…風刺文化もエンタメとして咀嚼できるリテラシーを身につけたい
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▼劇場
 チネチッタ
 CINE1
▼作品名
 字幕 リンダはチキンがたべたい!
▼日時
 2024/5/1(水)
 12:10~13:35
▼座席番号
 E-7
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