ビンさん

さよならモノトーンのビンさんのレビュー・感想・評価

さよならモノトーン(2023年製作の映画)
3.5
無知というのは怖い(笑)もので、本作を観て帰宅した際に、今日、こんな映画観て来たよ、と弟に言うと、
「あ、大原優乃が出てる映画やん」
と。

普段、アニメ映画か仮面ライダー物、戦隊物くらいしか映画館へ観に行かない弟が食いついたのも驚きだったが、その大原優乃さん自体、僕は存じ上げなかったのでWの驚きだった。

たしかに主人公修太を演じた中田圭祐さんの次にクレジットされているし、劇中でもかなり重要な役である。
僕はまったく存じ上げなかったので、修太の友人がセッティングした合コンの一人くらいにしか彼女が演じる美鈴というキャラを捉えてなかった。
なので、早々に物語からドロップアウトするだろうと思いきや、やたらと修太のことを気遣う形でその後もけっこう登場する。
で、そうか彼女がいわゆる本作のヒロインなのか、演じている方、けっこうキュートだったな、という鑑賞後の印象だった。

が、帰宅して弟に、
「何言うてんねん、彼女いまめっちゃ人気あるんやで」
と一笑されてしまったのだ。

あの、「ようかい体操第一」を歌ってた人だったんだね。
というか、大原優乃さんが出演している、というのは本作のセールスポイントの一つだったのか・・・。

僕が本作に興味を持ったのは、先週シアターセブンで夢中になって観た『クオリア』にも出演されていたインディーズ映画の顔とも言うべき(笑)、木村知貴さんがまたまた出演されていることと、深く感銘を受けた『在りのままで進め』にも出演されていた川連廣明さんが出演されているというこの2点だった。

特に川連さんの本作での役どころ、むちゃくちゃ嫌な奴で(笑)、本作での1番の嫌われキャラだったのが、逆に強烈な印象を刻んでらっしゃったのは個人的に嬉しかった。

という、広く一般的な興味とは、ちょっと違うのかどうかはわからないが(笑)、代行家族というユニークな設定ももちろん興味を持ったこと。

そもそも主人公の修太は、酒乱の母親の存在ゆえ一般的な家庭を持てないキャラ。
で、その彼が代行家族というアルバイトを見つけて、木村知貴さん演じる男を家長とする疑似家族の息子になる、という物語。

ただ、それ以外にも、登場人物それぞれが問題を抱えていて、言い方は悪いが「不幸の百貨店」の様相を呈している。
その中で修太を含め、それぞれが如何にして前を向いて歩んでいくか、という一つの目的に集約していくところが、本作の魅力だと感じた。

それ故、せっかくの代行家族という設定のインパクトが、少々薄まったように感じたのはちょっと残念だったところ。
それくらい、修太を取り巻く人々それぞれのキャラが濃いのだ。

舞台挨拶後に神村友征監督と、脚本・原案を担当された松尾栄佑さんに少しお話を伺ったが、かなり脚本は改稿を重ねたとのこと。

たしかに、これだけ登場人物それぞれに問題や悩みを抱えていて、描くからには投げっぱなしにはできないと思う。
それを納得行く形にまとめるのは、並大抵のことではなかっただろう。
劇場ではパンフとともに、シナリオも販売されていたので、あらためてじっくり読んでみたい。

このお二人の舞台挨拶だが、けっこう緊張されている松尾さん(大学時代の講師の方と、ご両親も客席におられたとのこと)に、ちゃちゃ入れながら補佐する神村監督との関係性が、師匠と弟子、もしくは父と子、と言ったら失礼か、兄と弟みたいな温かみを感じて、それこそ疑似家族のような様相で、見ていて微笑ましく感じたのは、計算されてのことではなかっただろう(笑)

松尾さんは大阪芸大のご出身とのこと。
僕の職場が富田林で石川を挟んだ位置に大阪芸大があって、毎日あのおとぎ話に出てくるような(笑)、お城みたいな校舎を眺めているので、とても親近感が湧く。
故に本作をきっかけに今後さらなる活躍を期待したい。
ビンさん

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