菩薩

悪は存在しないの菩薩のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.3
見当違いと言われればそれまでだが人生のテーマをなるべく世界を平らにならすとしているせいかなんか「分かる…」って気分になってしまった。決して軽い気持ちで撮っているわけではないと思うが随分と軽快な作品に感じたし、ハマグチェ自身のガス抜きの意味もあるのでは?高度経済成長期の行き過ぎた経済至上主義にNOを突きつける男こと植木等が演じた稀代の無責任男の役名が「平 均(たいらひとし)」であったのと同様に、この作品で世界に調和をもたらしバランスを保つ者として君臨する巧役の俳優の下の名前が「均」であるのは単なる偶然か。善悪にはじまりあらゆる二項対立は排除され対話による可能性の探究が模索されるものの、煙草を介した男臭いコミニュケーションや心も身体も温める美味そう過ぎるうどんで培われたはず希望は見事に潰え、相互理解に対する可能性はあの薪同様にぶった斬られる事となる。あの親子それ自体を「シカでした。」と嬉野先生するのが1番しっくり来る解釈の様な気もするが、人間中心主義を脱してあまりにも冷徹で大きい視野がなんともハマグチェっぽい。薪割りの場面でなんともうまい具合に高橋の足元に破片が飛ぶ、決して狙っているわけではないと思うが、偶然にしては出来過ぎている霧と同様そう言うのを味方に付けられるのがハマグチェなのだと思う。下から見上げるショットで始まり下から見上げるショットで終わる、ただその意味は大きく変わってしまっている。緊張と緩和、調和とバランス、悪ははなから存在するのではなく不均衡の中から生み出されていく。
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