Ayu

ほかげのAyuのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.5
塚本晋也監督作品はいつか観なきゃと思っていたけど(役者としての出演作は何作か観ている)題材の重さも相まって腰が重く、本作は森山未來が抜擢されたのでTIFFこと東京国際映画祭のアジア・プレミアにて鑑賞。

少ないながらも濃密な登場人物たちの演技の中に現れる、台詞では直接説明されない含みの部分の見せ方が上手い。前半は半焼けの趣里(今の朝ドラ、ブギウギと表情の作り方と発声が全然違うので相変わらず振り幅でかいなと思う)の店の暗闇が際立つワンシチュエーションの舞台から飛び出し、後半の森山未來が連れ出す闇市の外の世界は広く、美しく、そして残酷である。それでも自分の力で働いてご飯を食べ、今を生きることを少年は大人たちの助けを借りながら知る。最後に希望が残されていて良かった。

上映後は塚本晋也監督、ほぼ主役の少年を演じた塚尾桜雅くん、帰還兵役の河野宏紀さんによる舞台挨拶とQ&A。冒頭の挨拶では緊張のあまり言葉に詰まってしまうほどピュアな塚尾くんの昨年の夏休み中に撮影された本作、監督やキャストの皆とたくさんの会話を重ねて演じたこと、思い出は撮影終わりに皆とアイスクリームを食べたこと、と彼の愛くるしさに救われた🍦

事前情報一切入れずに観たので推しの森山未來の役どころは興味深かったな。夏の暑さに首から滲みそして流れる汗、最後のシーンで腕を天に向かって真っ直ぐに伸ばす一連の動作がとても美しかった。森山未來のキャラクターは塚本監督の知る、闇市にまつわる人々のことを将来のやりたいプロジェクトのビジョンも含めて全部森山未來に話して、これの要素を全部1人の人物に凝縮して演じて欲しいんだよろしく!と投げたものだそう。
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