KnightsofOdessa

Asphalt City(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Asphalt City(原題)(2023年製作の映画)
1.5
[危険な有色人種と思い悩む白人救世主] 80点

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ジャン=ステファーヌ・ソヴェール長編四作目。カンヌでのプレミア上映時は『Black Flies』という題名だったが、いつの間にか変更されていた。物語は新人救命救急士オリーが、ペアを組んだベテラン救命救急士ジーンと共に様々な現場を体験する、というもの。いきなり銃撃戦があった公園に行かされて呆然とするオリーは、その後も様々な現場で様々な患者と向き合っていく。凶暴な犬に噛まれたチンピラ集団、過酷な食肉工場で倒れた男、ランドリーで倒れたホームレス、通報したくせに妻を治療したくないDV男など、現場は社会の縮図のようだ。オリーは医学部志望で仕事をしながら勉強しているという設定だが、一足先に体験する現場の悲惨さに押しつぶされかけている。一方のジーンは、仕事中毒で家庭を顧みず、オリーが毎度新鮮に驚く現場に慣れて麻痺してしまっている。これといった本筋はなく、仕事風景を映して社会批評したい感じはマイウェン『パリ警視庁:未成年保護部隊』やアルノー・デプレシャン『ルーベ、嘆きの光』みたいな、カンヌの好きそうなお仕事映画の系譜にある気はするが、寧ろショーン・ペン枠か、配給会社の権力でセールスのためにねじ込まれた感のほうが強い(ボロカス言われてひっそり公開後即配信されてたのでセールスの得になったのかは謎だが)。上記の二作よりも酷いのは、銃撃されたのは黒人、チンピラ集団はラテン系、食肉工場で倒れたのはアラブ系、ランドリー経営者はアジア系、DV男はロシア系というように、"外から来た人々"が作り出した危険で混沌とした世界への転換を"アメリカの白人"の救世主が必死に押し留めようとしているようにすら見えてくる。救急車の中では救命救急士が神だ!とか言ってる奴は流石にヤバイ奴として描かれていたが、コチラは無意識なんだろう。オリーの名字が"クロス"なのも、彼が天使の羽が描いてあるジャケットを着てるのも示唆的だ。流石にキモすぎるだろ。
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