EnzoUkai

PERFECT DAYSのEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
友人経由でこの映画の製作は早くから知っていた。
その時は、ヴェンダースが日本で映画を撮るってことに驚きはしなかった。『東京画』とかヨージヤマモトのドキュメンタリーもあったし、ヴェンダースの日本好きは周知の事実。日本人からのお金を引き出し方もよく知ってる。『夢の涯てまでも』はかなり日本企業がお金を出した映画だ。当然、なんかあるんだろうなって思ってたら、案の定だった(それは皆さんも既にご承知でしょう)
ただ、友人経由で撮影の裏話が入ってきて、「待遇が違いすぎて日本映画に戻れない」と冗談めいたセリフが伝わってきたのが興味深かった。まぁ潤沢な資金でありながら、ヒットを期待されない映画だったと言うことだ。皮肉にも、ヒットしてるが。

ヴェンダースは日本人になりたかった。
しかし、日本人になることはできないから、役所広司の身体を借りて東京の片隅で生活をしてみたのだろう。
それでも完全に日本人になることは出来ず、異邦人の目で見た日本の美しさを画面に焼き付けた。
我々は役所広司の見る世界に美を見出す。それは、いわゆる転化された美であり、現代日本に生きる私たちはあたかもそれが日本の美しさだと勘違いさせられる。
我々日本人は役所広司の様に、花鳥風月に感じ入る感性を重んじ慎ましく生きる、というヴェンダースの勘違いに騙されてはいけない。
気が付けば、既に我々だってヴェンダース同様に異邦人なのかもしれない。。

ヴェンダースは、『ベルリン天使の詩』頃から、日常の些細な出来事に目を向けようとしている。見落とされがちなものに価値を見出そうとする。これ、ジャームッシュもそうなのである。儚さに価値を見る。
果たして現在の我々はどうか?
ヴェンダースやジャームッシュは我々日本人に問い掛けている。
では、お前達はどうなのか?、と。

丁寧に淹れられた茶一服に感じ入る暮らしが出来ているのか、それが問われている。
EnzoUkai

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