しゅんすけ

SISU/シス 不死身の男のしゅんすけのレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
4.4
「SISU シス/不死身の男」

マスコミ向け試写会にご招待いただき鑑賞しました。

「レア・エクスポーツ」「ビッグゲーム」などのヤルマリ・ヘランダー監督最新作。1944年の戦時中のフィンランドで、荒れた大地で金を掘り当てた老兵と、その金を狙って戦争後の安定な暮らしを目指す狡猾なナチス軍人たちとの闘いを描く物語。

 いやー、91分と短くほんとに無駄のない映画でした。
例えば、「マッドマックス 怒りのデスロード」や「RRR」などは、観たことないアクションや世界観のごり押しで加点方式で100点を超えてくるタイプの傑作だと思うんですが、本作はそういう派手なシーンはないものの、減点する要素、つまらない部分、ダメな部分が一つもないというか。100点は超えないけど、100点からそんなに減らない=高水準な1作だと思いました。

 あとは、やはり北欧映画ということで、ハリウッド映画にはない、ドライな人間描写、倫理的なセーフラインを急に飛び超えてくるバイオレンス描写(赤黒い血や爆散する人体など)、寒々しい風景などが大いに詰まっていた1作でもありました。

 本作で好きなシーンは、ほんとに一瞬なのですが、主人公が金を掘り当てたあと絶叫し、次のカットで広大な風景のなかで、流れる小川で全裸で立ち、水浴びをしているカットですね。めちゃくちゃカッコよかった。

 敵側のナチスも、いかにも悪い奴らとして描かれているというよりは、いずれ敗戦になるのをわかっている諦めムードが漂っていて、それでも自分たちは何とか金で安定した暮らしを得ようというズルさが目立つキャラクターでした。途中で地雷原を進む際に、女性を盾にしたり、直接的な描写はないものの、ベルトを締め直す仕草から、女性たちを慰み者にしているんだろうなというようなシーンもあり、めっちゃ強い不屈の主人公とは対照的な、とにかく小っちゃい男として描いているのが印象的でした。

 91分と短いですが、爆破シーンなどは派手ですし、広大な風景を切り取った撮影が魅力の1作でもあるので、配信や午後ローでの放送を待つのではなく、映画館で短い時間でサクッと、しかし迫力をしっかり味わうべき映画かな~と思います。おすすめです!