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AIR/エアのhikarouchのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
3.9
オレたち全員が経験したかった、仕事での一世一代の大勝負の話。
チーム、情熱、信念、プロダクト、駆け引き、プレゼンテーション、仕事の大事な要素がぜんぶ詰まってた。これ見ると仕事のモチベーション上がると思う。
”You are remembered for the rules you break.”とかのお仕事名台詞も多かった。

そして出ました!名スピーチがあると名作映画っぽくなる説!キング牧師のエピソードを伏線にした胸が熱くなるスピーチで良かった。んだけど、でもなんだろう、まだナニモノでもないジョーダンに対して、大のオトナたちがここまで賭けられるものなのか!?ってのは冷静に思った。ここで契約を勝ち取れたとしてもビジネスとしてはまだ何にもなっていなくて、その後ジョーダンがNBAで活躍して、スーパースターになって、シューズが売れてようやく初めてバンザイって話のはずで、まだ道半ばどころかやっとスタートラインにたっただけ、これでシューズが売れなかったら会社傾いちゃうリスクありまくりな状態なんだけどね。これが本当なら、もはや自分たちのギャンブル自体に熱くなってしまっているのではないかと思えるし、その後のエア・ジョーダンの大成功を知る未来人視点の脚色だったようにも思える。
でも、あのスピーチで終わらず、ジョーダンファミリーが退席した後の会議室の熱気冷めやらぬ感じまでやってくれたのはすごく良かった。

クリス・タッカー(だったんかいお前!)を久しぶりに見たんだけど、緩急をつけた演技が良かったね。あの電話ボックスでソニーと話すシーンは、その後の展開を知っている自分でも胸が熱くなったな。

この映画ではジョーダンの母親の立ち回りがマジで強烈なんだけど、後から調べたらこれが100%真実ってわけでもなさそう。契約の最後に超重要な追加条項を提示したり詳細を詰めたのはエージェントのフォークだったというのが定説らしい。そりゃそうよね。バスケ少年を育て上げた母親が巨大ブランドとの契約に詳しいわけないし、そもそも自分の息子がいよいよプロの世界に挑戦するというタイミングで、あんなしたたかな動きできるとは思えない。できたら逆に怖いわ。
ただ、あそこで描かれた母親の心理に嘘はなかったと思うし、現在のNBAのスーパースターであるケビン・デュラントの母親が書いたコラムを読んでも、そのことが良くわかった。

ちなみに制作のAmazonは本作を配信オンリーにする予定だったところ、試写会での評判が良かったため急遽劇場公開に切り替えたとのこと。つまり、「劇場で見なければいけない」ってタイプの映画ではないとは思う。

これは映画に直接関係ないのだけど、主人公のソニーはこの映画の数年後にNIKEを解雇されてライバルのアディダスに入りコービー・ブライアントとの契約成立に貢献している。さらに、劇中でも印象的な活躍を見せる初代エア・ジョーダンをデザインしたピーター・ムーアも、その後アディダスに移籍して今も健在の三角形のブランド新ロゴをデザインしている。この辺の後日談も面白いね。

ケビン・デュラントの母親のコラム
https://www.usatoday.com/story/opinion/voices/2023/04/05/air-movie-michael-jordan-nike-impact-black-mothers/11578398002/
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