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パスト ライブス/再会のodyssのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
2.0
【いい気な女】

期待したのですが、残念な出来でした。

韓国の男女が12歳のときにお互いに好意を抱いていたのに、女の子は親の意向でカナダに移住する、という設定です。

その後、24歳のときにパソコンを通じて交流が復活するのですが、またそれが途絶えて、さらに36歳になって再会するものの、女にはすでにユダヤ人の夫がいて・・・という展開です。

この映画、どういうつもりで作っているのか、よく分かりませんでした。

それは、主役ふたりの関係だけでは済まない筋書きなのに、背景描写がいい加減だからです。

まず、女の子は父が韓国の映画監督、母が画家という設定です。つまり、韓国内に住み続けても問題はないだろうという環境にある。

それでもカナダに移住するからには、それ相応の理由があるはず。
たしかに女の子は作家になりたいという夢を持っており、それには韓国在住よりも英語圏在住のほうが有利という判断があるのですが、そもそも親が韓国から他国へ移住するからには、それで食っていけるという条件がなければなりません。

それに、英語圏には韓国だけでなく色々な国家や民族から流入してくる人材が多いはずですから、そこで或る分野で頭角を現すのには激烈な競争を勝ち抜かなければならず、それなりの苦労があるはず。

ところがこの映画ではそういう外的な、しかし大事な条件がさっぱり描かれていません。12歳まで韓国に暮らした少女が英語圏で文学者として認められるのにはそれなりに苦労があったはずですが、この映画はそういうところをほぼスルーしています。

つまり、男女の相互の思いがあったにしても、それは双方の日常での(大学や就職後の色々な苦労の)描写があってこそのことなのですが、この映画はそういう面への言及が圧倒的に不足しているのです。

また、最後で韓国人の彼がニューヨークにやってきて、24年ぶりの再会を果たすところでも、彼の思いは分かるし、逆に彼女の夫の気遣いや葛藤も分かりますが、ヒロインの考えは分からない。

まともな女性なら、そもそも彼には会わないと思うな。だって夫がいる身でしょう。

仮に韓国から訪ねてきた彼の思いを汲んだとしても、少なくとも夫と会せることはしないでしょう。夫を苦しめることになるばっかりだもの。

だから、ヒロインはタチが悪い女なんですよ。
それが、脚本を作る側に分かっていないってことは、相当にダメ映画だってことなんです。

タチの悪い女をそうと見抜けない人のための映画(笑)かな。

ヒロインを演じる女優は、ちょっとだけ吉永小百合に似ているけれど、なんか根本的な魅力に欠けていますね。彼女の少女時代を演じる子役もブスだし。総じて、この映画では女に魅力がありません、外見的にも、筋書き的にも。
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