荒野の狼

マエストロ:その音楽と愛との荒野の狼のレビュー・感想・評価

1.0
正直この作品、このキャスティングでは見たくなかった。そういう映画だった。
バーンスタインというと、『ウエストサイド…』ですら録音は殆ど聴いたことがないが、どうしてもカラヤンと重なってしまうのはこの二人、指揮者なのに世俗臭が拭えないからである。何故かマエストロの称号が似つかわしくないのだ。その意味では私のこの直感は間違っていなかったし、まさにそういう人物像として描かれている。おそらく監督の意図もそこにあったと思われる。これは真面目に見てはいけないんだな、と思わせるブラッドリー•クーパーのメイキャップが酷(ひど)い。そっくりにしようとして、これでは仮装にしか見えない、つまりお面を付けているようなのだ。バーンスタインというよりゴシックホラー、ベラ•ルゴシ。きっと誰かに「あなたは表情に深みがない」とか言われたんじゃないか?まあ間違ってはいない。
一方のキャリーマリガンにしても、この人には「老け役」は不向きである。チャレンジを通り越して無理があり、若き頃も老いてからもこれでは汚すぎる。ご両人ともヴィジュアルは、ソックリさんのモノマネ演技じゃないか。従ってこのイカれた感じは良くとらえていると思うし、バーンスタインをその程度の俗物人格にしてしまっている。それが監督の狙いならば確かに成就はしているけれども、同時にブラッドリー•クーパー自身(同じくキャリー•マリガン)をも下げてしまったような、なんだかなあという残念な映画である。
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