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ナイアド ~その決意は海を越える~のRenのレビュー・感想・評価

4.0
面白いね〜〜。そしてあの傑作ドキュメンタリー『フリーソロ』の監督作品と知り超納得した。今最も万人に広くおすすめしたいNetflix映画はもしかしたらこれかもしれない。

多くの人にとっては共感不可能な、不屈のチャレンジャーの「vs夢・運命」の話。その説得力は『フリーソロ』のようにライブ感による緊迫感があるからこそ担保されるものだと思っていた。今作は、回想ドキュメンタリーでは再現不可能なフィクション性を堂々と確保し成功した。
『ザ・ウォーク』などは、ケイパームービー的盛り上がりやフィクションでないとできないカメラワークでエンタメ性を盛り上げて成功した。他方で今作のフィクション性は、ナイアドというキャラクターの描き方を補完する。

ナイアドに刻み込まれた過去の傷やトラウマやカルマがフラッシュバック的に挿入される。それでも彼女は、自分のために、潮に流されもがきながら水を掻き分ける。これが「泳ぐ」という行為そのものとマッチして(しまって)いるのがドラマチックだ。
そのためには、遠泳に挑むナイアドには「現在性」が担保されている必要がある。だからこそフィクションなのだ。ドキュメンタリーだと、「フラッシュバック先の子ども〜青年期のナイアド」も「遠泳に挑むナイアド」も過去の存在になってしまってくどくなる。

幻想のような夜の海を泳ぐシーンが白眉。泳ぐことは彼女の煌めきであるという希望が、「希望と思い込んでいた絶望」にノータイムで変貌する。
この映画、実は感動と恐怖の波のリズムがとても上手い。それでいて恐ろしくテンポも良い。ナイアド自身に、仲間に、天候に、海に、トラブルの火種がコロコロと移り変わりそれらを乗り越えること自体に興奮できる。

偉業を成し遂げるには素敵なチームが必要だ、という普遍のスポ根でもある。
ナイアドとボニー、互いが互いに気の置けないパートナーであり相手を思い自分のことを思っているからこそ繋がっている、最高のシスターフッドでもある。
ベタと言えばベタだけど、やっぱり面白いが勝つ。2人がアカデミー賞の演技賞にも無事ノミネートされたし、今のうちに観てみて!

その他、
○ アネット・べニング、一層目だけ見たらぶっ飛んだチャレンジャーだけど二層目には枷やトラウマを抱えていてそれでも掻き分けるように進む強かさ、そしてやっぱり突き放せないラブリーさを端々から滲ませていてそりゃ主演女優賞だわーと納得。
○ 万人におすすめできると書いたが、海恐怖症の方には少し勧めるのを躊躇うかも。
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