Ayumi

ハントのAyumiのレビュー・感想・評価

ハント(2022年製作の映画)
4.0

ロンドン東アジア映画祭のオープニング作品。1980年代の韓国KCIAで働くパク(イ・ジョンジェ)とキム(チョン・ウソン)がメインキャラクター。冒頭、いきなりワシントンで大統領の暗殺未遂事件が起きる。組織内に北朝鮮のスパイがいると判明したことで、上司によって互いのチームにスパイがいるか調べろと命じられ、二人は繰り返し衝突する。しかしスパイは意外な人物で…という物語。

ワシントンでの大統領暗殺阻止、東京での北朝鮮人の亡命計画(でもけっきょく銃撃戦になる)など、アクションシーンはかなり派手なものになっている。随所に出てくるKCIAの取り調べでの拷問シーンも含めてやや辟易したのだけれど、物語が意外な方向に転じていき、観客を飽きさせない。

上映後のQ&Aセッションで、イ・ジョンジェは「ファンタジーが半分、史実が半分」と話していた。しかし、骨格となるできごとは、1980年の光州事件、1983年のラングーン事件を元にしたと思われる。光州事件で多くの市民が殺された事実を知ったKCIAの人間は、何を考え、どう行動するか。初監督となったイ・ジョンジェの政治に対する真摯な考えが伝わってくるような作品だった。

もともとこのストーリーの権利を買った後、イ・ジョンジェは監督を探したらしいのだが、「誰もイエスと言ってくれなかったので自分でやることにした」とのこと。そしてキャストがとても豪華。東京のシーンにパク・スンウン、ある企業の社長にユ・ジェミョン。イ・ジョンジェ、これからも映画を作ってほしい。
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