しゅんすけ

イコライザー THE FINALのしゅんすけのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.2
「イコライザー THE FINAL」

デンゼル・ワシントン主演の人気シリーズ3作目にして最終作。
表の顔はどこにでもいる一般人を装いながら、元凄腕のCIAという裏の顔を持ち、世間の人たちを追い詰めたり、騙したりして悪事を働く組織を秘密裏に壊滅に追い込む男、ロバート・マッコールの活躍を描く。

とある理由でイタリアの小さな港町にたどり着いたマッコールは、町の人々の優しさに触れ、ついにここが自分にとっての安息の地だと思い始める。しかし、組織の拡大を目指すイタリアンマフィアが活動の拠点にしようと町に不穏な影をのぞき込ませており・・・・という話。

「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」ムービー、「バイオレンス夜回り先生」というデンゼル・ワシントンの知的で優しさにあふれた雰囲気と、圧倒的な戦闘力&殺し方の残虐性がたまらないシリーズですが、本作は、「1」「2」とはかなり毛色の違う作品だと思います。

 なので、シリーズ2作とも好きですが、「1」>>>>>>「2」なぐらいに1作目をこよなく愛している自分からすると、アクションシーンから得られる快感であったり、マッコールさんの表の顔と裏の顔のギャップからくる面白さなどは大きく減ってしまっている印象でした。
 しかし、「1」「2」とはまた別の面白さがある1作でもありました。

 冒頭でマッコールさんの倫理観がちょっとぐらついてしまうようなショッキングな出来事があり、そこからしばらくはマッコールさんの心と体のリハビリが描かれているんですが、ずーーっと不穏な空気が漂っている。

もちろんイタリアマフィアの過激な取り立て(過去2作がPG12指定であったのに対し、今作はR15+指定ということで暴力描写も3作のなかで一番直接的)もあるのですが、OPのそのマッコールさんの倫理観が揺らぐ出来事のせいで「今優しくしてくれている人も実は悪いやつなのでは?」「この優しくしてくれる人たちが無慈悲にも殺されちゃうのでは?」というイヤーなドキドキを味わうことになります。

 アバンタイトル以降、次の大きな見せ場があるまでの間が長いので、全体的に退屈、単純にアクション量も少ないので、アクション映画的な側面を期待すると肩透かしを食らうかもしれませんが、この不穏な空気をじわじわと味わう人間ドラマとしてみると中々味わい深いものがあります。アクションというよりホラーに近いぐらいぞわぞわしているんですよね。

 肝心のアクションに関しては、一言でいうと「怖い」。本気で悪者に牙をむいたときの容赦なさ、敵の追い詰め方の恐ろしさがシリーズダントツでした。描写も直接的で痛々しいですし、ナイフでの格闘シーンもマッコールさんが刃物で敵をずばずば刺すのではなく、ナイフを持った敵の手を押さえて、敵の手を動かしてドスドスと刺していく感じがクレバー&怖さを際立たせていました。

 「イコライザー」のアクションの大きな特徴としては、クライマックスで敵地に乗り込んで戦うのではなく、自分のホームタウンに敵を呼び込んで戦い、用意周到に張り巡らされた罠にはめていくという点があるのですが、(「1」は職場のホームセンター、「2」は亡き妻と暮らしていたハリケーン下の小さな港町)本作はついに見つけた安息の地を汚さないようにという思いからか、初めて敵地に乗り込んで戦います。ここが完全にホラーでした。いやー、ほんとうにここは背筋が凍るような恐ろしさでした・・・・・・

 というわけで、アクションというより、マッコールさんの容赦ない敵の追い詰め方と、不穏な空気が終始漂う人間ドラマとしてしみじみと楽しみました。暴力描写がきつめ&シンプルに怖かったので、これから観る人はその点だけ要注意かなと思います。