荒野の狼

インフィニット・ストームの荒野の狼のレビュー・感想・評価

インフィニット・ストーム(2022年製作の映画)
4.0
個人レベルの七転八倒と、それには全く無関心な自然描写とのコントラストが良い。「自然はよそよそしく残酷である(マルキ•ド•サド)」。きめ細かく精緻に撮られた雪山を、こういう撮影で見せられると、自然というのは正直吐き気を催すほどの姿をしている。「存在者」ではなく「存在」の無気味さは想像を超える、と言うか想像を許さない。イメージを破壊してくるものはどんな怪物よりも恐ろしい、〝名前”のつけようがないからだ。そういうシチュエーションの中で、力(りき)まず、女優としての生き様を見せようとするナオミ•ワッツスタイルが『ウルフ•アワー』(こちらはインドア)に次いで、今回も良い。遭難救助だって、見方を変えれば自殺行為だ。生きて帰れる保証は無い。共に死を意識した二人が共に生還するという、まあ地味といえば地味で静かな映画だが、ベタつきを排除したエンディングが良い。ナンバープレートの「自由か死か(Live free or die)」の字幕が場面転換後も、やけに長く表示される。本編にはないこれは、ネトフリの演出だと思うが悪くない。
荒野の狼

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