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さかなのこのhikarouchのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
3.9
何を置いても、輝く能年玲奈を見られる幸せよ。磯村勇斗、柳楽優弥、夏帆となかなか強力な俳優陣を脇に置いて、堂々たる主演ぷり。さかなクンの伝記映画で、主演に彼女を持ってきたキャスティングの大勝利でしょうこれは。あまちゃんでファンになり、その後の元所属事務所およびそれに忖度するメディアの酷い扱いも考えると、輝く彼女を見れることが本当に嬉しい。

ある人物の人生ドラマとしても、笑えるオフビートコメディとしても、とても楽しめる映画だった。「アジの骨茶しか無いけど」って!笑

もちろん、つよつよな脇役陣もとても良かった。磯村勇斗は、コメディ上手ですね。映画の笑いの間をカンペキに理解している感があって良い。

なにかを「好き」という気持ちの尊さを全身から発するミー坊(さかなクン)と、それを後押しする井川遥演じる母親や幼馴染や同級生たち。ただ同時に、「好き」だけでみんながみんなうまくいくわけじゃないということも観客に感じさせ考えさせているのがこの作品の優れているところだという気もした。

ミー坊(さかなクン)には、どんどん背中を押してくれる母親と、ちゃんと向き合って理解してくれる友人たちがいて、そんな彼らが大人になって今度はプロとしてさかなクンをフックアップしてくれるという、「縁」と「運」に異常に恵まれたレアケースだ。

そうした幸運を引き寄せたのは間違いなくミー坊自身だが、それでもやはり幸運だ。そうならない可能性の方が高かっただろう。だから、この映画をみて、みんなが井川遥のような子育てをするべき、と思ってしまうのは早とちりだと思う。

それでも、周りの人々がミー坊を思う気持ちと、不器用にそれに応えようとするミー坊の10年以上におよぶ大河ドラマは、やっぱり胸が熱くなるし、「さかなクン、良かったなあ」と思わずにはいられない。
母親がラストで告白する衝撃的な家族の秘密には、ひっくり返りそうになると同時に、泣きそうになった。こういうのが本当の愛なんだよね。

我が家の子どもたちもさかなクン大好きで、毎週番組を録画して何回も繰り返し見ている。さかなクンや、彼を支え続けたご家族や友人のみなさんには感謝感謝。

最後に、この作品の脚本に関わった前田司郎氏の性加害疑惑については、お互いに当事者の見解だけを投げつけあってるだけで第三者により裁きがくだされていないので判断のしようはないが、この件に限らずそういうことって世の中(特にエンタメ業界で)まだまだたくさんあるんだろうなと思って、暗い気持ちになってしまった。
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