映画ネズミ

遠吠えの映画ネズミのレビュー・感想・評価

遠吠え(2021年製作の映画)
3.7
向いている人:
①印象に残る映画体験がしたい人
②『ハンターハンター』読んだことある人

 こんにちは。マッチングアプリやったことない系映画レビュワー、映画ネズミです。

 最近ミニシアター系の邦画を見るチャンスが多くなりまして、本作もいち早く見るチャンスをいただきました!

 本作は、僕が参加している映画コミュニティ「チネマット」でオンライン試写会も行われます。

 観終わった後「自分は何を見たんだろう…」と思い、つい考えてしまう映画でした。

 カラオケ店のマネージャーをしていた40代男がある日クビになり、マッチングアプリで出会った女子高生から「自分の父親を殺してほしい」と頼まれるという物語です。

 そこに、40代男(主人公)の初恋の女性の物語や、とある宗教を信じる「教主」と名乗る男が絡んできます。

 1時間半ある本編のうち、前半を見た印象では、
 日常に鬱憤を抱えた男の爆発を描く、日本版『タクシードライバー』のような物語かな、と思ったりします。

 あるいは、鬱屈した実人生と、依頼を受けた殺し屋としての人生の間で揺れ動いて、真の自分の生き方を模索していくのかな、と思ったりもします。

 でも、どちらも違う!!これが一番の驚きでした。

 監督のシェークMハリスさんが脚本も担当されていますが、観る者を知らない世界に連れていく、巧みな脚本だと思いました。

 一番の見せ場は、タワーマンションのロビーで、女子高生と、40代男の初恋の女性が2人話す場面でした。

 2人はそれほど面識はないのですが、静かな会話の中で互いの苦悩を感じ、寄り添い、共に決意を固めることが良く分かる、熱い場面になっていました。

 「こういう時こそ大人を頼ってください。ちゃんとした大人を」という台詞は、今の少年少女を取り巻く社会問題に対する一つの回答になっている気がして、印象に残りました。

 そんなシリアスな場面があったかと思えば、唐突にハンターハンターネタが放り込まれるので、油断も隙もありません笑

 終盤は、色々な人が入り乱れてカオスが増幅していく、めちゃくちゃシュールな場面になっていました笑

 映画全体で見るとクライマックスですし、ある人物のドラマの最高潮を迎えているのに、

 状況を把握しないままその場にいる人が多すぎて、「今これ何見せられてるの!?」と、何とも言えない気分にさせられます。

 この独特な味わいこそ、本作の魅力です。

 鑑賞直後には「自分は何を見たんだろう…」と思い、それを考え始めるといつの間にか時間が経っています。同じ作品を見た人と感想を語り合いたくなります。

 好みは分かれるかもしれませんが、見たら印象に残ること間違いなし、一見の価値ありの作品です!
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