Maki

マイ・ブロークン・マリコのMakiのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭、永野芽郁演じるシイノトモコの子供の頃からの友人マリコが自殺したことをテレビから流れてくる淡々としたニュースで知らされる。それからシイノトモコの回想でマリコという女性の姿が描かれる。

 思い出すのはいつも傷だらけで笑うマリコばかり。幼いマリコの顔にはいつも青あざがある。空想好きで甘えた声で話す夢見がちな少女で、子供の頃の無邪気に会話する二人のいる場所はいつも青空の下で、陽射しがキラキラしていて暖かく緩やかな時間がそこにあるのが感じられる。誰も二人の間に割って入ってくることもない。
子供時代の流れてく時間の遅さと未来がとても遠くに感じられたこと、大人たちによって作り出された社会の中で家と学校しか生きる世界の無い子供時代の途方もなさが悲しく切なかった。
遠くに行きたい。けれど行けない。マリコは時間もずっとシイちゃんと過ごした子供時代に止まったままだったのかもしれない。最終的に死を彼女は選んだけれど、それは彼女にとっては死ではなくて、子供の頃からずっと遠くに行きたかった彼女が新しい世界へ一歩踏み出したことだったのかもしれない。

「生まれて来るところ間違えたみたい。お母さんにも言われた。シイちゃんの子供に生まれたかった」
と呟いていたマリコと、流れてく夜の車窓を横に誰にも見えないマリコの残像を抱きしめ眠るシイちゃんの姿が傷ついたキリストを抱くマリア様、ピエタ像のように見え演じた永野芽郁さんの表情がとても優しく美しくて思わず嗚咽してた。
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