けんこや

TAR/ターのけんこやのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.4
何かこう、桁を一つ二つ振り切ったような圧倒的な映画の力を感じさせられてしまった。
凄すぎる…。

あまり言葉が追いつかないので少しずつ箇条書で書き出してみると…

冒頭から1時間続く対談ー講義ー会食といった会話劇と描写でターがどれだけ偉大なのかという外面的性質と、どんな人間性なのかという内面的性質をじっくり丹念に伝えてくるのが凄い。
ほぼ全てのシーンに意味があり説明があり解釈があり無駄も隙もないところが凄い。
チラ見せのカットにもきちんと意味があるのが凄い
冒頭のステージを見てたりこっそり街角でターのことをストーキングしてる赤毛の後ろ姿が凄い
その後ろ姿の人を別の女性にミスリードするのが凄い
冒頭から1時間でようやくターがタクトを振るうのが凄い
一たびタクトを振るうと、誰がどう見てもちゃんと凄いのが凄い
リハーサルでちゃんと閃く作劇が凄い
英語とドイツ語が入り混じるのが凄い
ターというタイトルが凄い
ジャケットが格好良すぎて凄い。
ターが男性言葉なのが凄い
ターがパパなのが凄い
チェロの人が凄い
ターのやらかしかたが実にそれっぽいのが凄い
やらかしを回収する下手さも実にそれっぽいのが凄い
巻き込まれる人たちも実にそれっぽいのが凄い
最終的な破綻もこちらの予想の上からくる暴挙なところが凄い
破綻した結果、自分が陥れた教え子と同じ境遇に陥るのが凄い
ターなのかケイト・ブランシェットさんなのかわからなくなるのが凄い
ターの実家の感じが凄い
ターの兄との一瞬の会話で二人の過去から現在に至るまでの関係性がどのようであったのか想像つくのが凄い
ターがメダルを首にかけてるのが凄い
実家の自室で気づきを得る「本質」が素晴らしい
逆境への向き合いが方がかつての教え子と対照的なのが素晴らしい
「まずはこの曲を解釈するところから始めよう」と言い、屋台のテーブルで楽譜を広げてじっくりと向き合い、本気で正々堂々と取り組む楽曲が“ああいった感じ”であったのが何よりも心を揺さぶられるほど素晴らしい(ここがこの作品の中で本当に素晴らしいと感じた)

凄いところ、もっともっとでできそう。
汲もうとすればするほどどんどん出てくるところが凄
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