hikarouch

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのhikarouchのレビュー・感想・評価

3.3
見る前から明らかに苦手なタイプのジャンル映画だと思っていたけど、話題作だしアカデミー作品賞だしというので、Netflix配信が来たタイミングで見た。

感想は、思った通り苦手だなということと、それでも思った以上に良いところもあった。

まず絵が良い。これぞA24。見れる。

そして話運びがスマート。結構斬新なマルチバース設定を、くどくどしたセリフやナレーションを使わずに説明できるのはすごい。マルチバースをネットワーク図で視覚化したのも、ありそうで無かった良いやり方。「きみ、もしかしてさっきちゃんと話し聞いてなかった?」っていう反則ギリギリの技を使って、丁寧に説明し直すのも上手かった。

他のバースから持ってくるのはそっちのバースの自分が持っている能力だけ、ってのがめちゃくちゃで全然理にかなってないけど、設定としてはなかなか面白かった。
一方で、断片的な回想ムービーのように別バースを部分的に体感したり、何ができて・できないのかはやっぱりよく分からないし、分かるようにも作られていないと思う。

合理性とかご都合主義とかのツッコミをするような作品ではない。

アクションの魅せ方がちゃんとキマっていてすごいなと思ったら、クレジットにルッソ兄弟の名前が。さすがです。

これ編集大変だっただろうなー。そして脚本どうなってたんだろう。どうやったらこんな作品が作れるのか、想像を絶しますわ。

冒頭から◯(まる)が象徴的に使われており、アジア系移民ファミリーの話において、アメリカカルチャーを象徴するものとしてベーグルを据えるのが上手いなあと思ったり。家族がひと繋ぎになってベーグルに吸い込まれないように踏ん張る、というのが実に象徴的だった。(「ベーグルに吸い込まれる」って生まれて初めて書きました。)

マルチバースの壮大な設定の話でありつつ、主要人物は全員家族だし、メッセージとしても個人の人生や家族と生きていくうえでの哲学の話だったので、とっても小さなお話。そこに感情移入できる人は深く感動できるんだろうと思う。

個人的には、話運びに必然性が感じられないので(他のバースからとってくる能力が毎回すごく都合が良いとか)、見ながら悪い意味ですごく作り手の存在を意識させられた。ゆえに、登場人物も話も全部作り物に見えてしまうため、感情移入できなかった。

あと、お尻とかシモネタとか犬とかのギャグがことごとく笑えなくて、どっちかというとちょっと不快で、そういう描写のたびに冷めてしまった。
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