レインウォッチャー

ブレイキング・バッド ファイナル・シーズンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

4.5
迎えた最終シーズン。確かにすべてを見届けた、という思いに深い息が洩れる。

果たして、このドラマのテーマとは何だったのだろう。
ウォルターの辿り着く「結果」は、ある意味で1stシーズンから誰もが予感していたこと。やはり、生きることはその過程に意味がある、と言われている気がする。

家族のために…とか、余命が少ないから…といった、おそらく自らの目も晦ましていた理由を剥ぎ取っていって、ハイゼンベルクという別のペルソナを通して漸く見える目的。ウォルターは今シーズンでついにそれと向き合う。
それは、どんな言い訳をつけようが悪は悪、みたいなメッセージとして捉えることもできようけれど、そう単純でもないところに今作の苦味雑味旨味があると思う。

ウォルターは、この物語のあいだ確かに生の実感を取り戻していた。病魔に侵され、後戻りできない悪に手を染め、大切だったはずのものを失ってなお、彼は「幸せ」だったのではなかろうか。
それは皮肉であると同時に、警鐘でもある。自分にとっての真の幸福とは何かに気づくことは、それほど難しい、と。

最後に思い出したのは、『ジョジョの奇妙な冒険』第三部のジョセフ・ジョースターが今際の際に告げた台詞であった。

「この旅行は実に楽しかったなあ……
 いろんなことがあった…
 まったくフフフフ…
 本当に…楽しかった…50日間じゃったよ」