レインウォッチャーさんの映画レビュー・感想・評価

レインウォッチャー

レインウォッチャー

春画先生(2023年製作の映画)

3.5

春画研究をきっかけに倒錯の扉がひらく…そんな、谷崎潤一郎的世界を現代で描こうとするアナクロな志たるや良し、それに演者/衣装/舞台などの美術面も良し。
ただそれだけに、大きな2つの点で惜しいことが悔やま
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

まず、際立つのは音である。
石橋英子とジム・オルークらによる、忘れられた淵で静かに逆巻く水流を音で掬ったような劇伴はもとより、物音の制御が細かく、明らかにデザインされている。雪を踏む足音、息遣い、銃声
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またまたあぶない刑事(1988年製作の映画)

3.0

前作で身体にトレンディ抗体ができたのか、けっこう慣れてきた気がするぞ。
今作はアクロバティックなカースタントとか、鏡を使ったアングルとか見どころも多い。『ダーティ・ハリー』(めちゃうろ覚えだが)思い出
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愛・アマチュア(1994年製作の映画)

3.5

かつてマリア様から色情狂とお告げを受けた元尼僧で官能小説家志望で処女でドリルが似合うI・ユペール。設定渋滞すぎて次のインターチェンジも映画の終わりも見えません。

上記の彼女・イザベルと、路上で目が醒
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ピアニスト(2001年製作の映画)

4.5

M・ハネケ×I・ユペール=不可解の深い森。

さあやって参りました、愉しい変人偏屈のお時間ですよ。
捩れや歪みが細く引き絞られ過ぎると笑いにすら至る、という境地を堪能できる…と同時に、映画(に限らず)
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正欲(2023年製作の映画)

3.0

かつての米空軍で、戦闘機の機能改善のため、コックピットが全パイロットの平均値にあわせて再設計された。するとどうなったか?答えは、「誰にもフィットしない」戦闘機が出来上がったという。
この有名なエピソー
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あぶない刑事(1987年製作の映画)

3.0

今や映るもの聞こえてくるもののだいたい全部が間違ってるんだけれど、こんなパッパラパーな時代に大人でありたかったなあ、と羨ましく思っちゃうのも確かなのである。この日本を経験してるかしてないか、ってその後>>続きを読む

キラー・ナマケモノ(2023年製作の映画)

2.5

『キラー』…『ナマケモノ』。
嗚呼、なんて落ち着く響きなのでしょうか。

『哀れなるものたち』に『Past Lives』、『ボーはおそれている』…映画には印象的で謎めいた響きのタイトルが多くあり、内容
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ボトムス ~最底で最強?な私たち~(2023年製作の映画)

4.0

ゆずこしょうで味変した『ブックスマート』。

ルーザーガールズはカーストをひっくり返せるか?苦味酸味鉄味の強いComplicatedな味わい、しかし最後には誰もが愛おしい。守護星座はCharli XC
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ロスト・キング 500年越しの運命(2022年製作の映画)

3.0

英国産のくせに普通にイイ話…だと…?

「一般人女性が希代の悪王の遺骨を発見し、同時に評判を覆した」。
この事実自体は興味深いし面白い、でもこの映画にはそれ以上も以下もなく、じゃあwikiでよくね、っ
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もらとりあむタマ子(2013年製作の映画)

4.0

モラトリアム(moratorium)=猶予期間。
タイトルに違わず、主人公タマ子(前田敦子)はもちろん映画自体がモラトリアムってる。なぜなら、この映画は「ゴールしない」からだ。そして、それが何より心地
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天然コケッコー(2007年製作の映画)

3.5

頬杖をついてめくるアルバムのような懐かしさと面映ゆさ。

少年漫画におけるコマやページの繋がりが《→》なら、少女漫画は《〜》。ってイメージがなんとなくあるのだけれど、それにうまく沿っている、と思った。
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異人たち(2023年製作の映画)

4.0

あのとき言って欲しかったこと、言ってあげたかったこと。
沈殿したそれら幾つもの上にわたしたちの今日は乗っかっていて、ふとした夜にざわつきだし、ベッドはぐらりと波打ち揺れる。シーツの底へと引き込まれなが
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壁の向こうのあなた(2024年製作の映画)

3.0

壁激薄アパートでピアニストを目指すガールの隣人は、騒音NGの繊細引きこもりボーイ。…イイ!着眼点は。(倒置法)

スペインらしく明るい甘辛なカラーパレットが映えるインテリア、ぶきっちょさがチャーミング
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リンダはチキンがたべたい!(2023年製作の映画)

4.0

記憶や想い出が、《色》つきで保存されていることってないだろうか。
鍵盤ハーモニカのドレミについていたシール。アルファベットのパズル。《ド》は赤で、《J》は緑?

なんでも、世の中には音を聴けば実際に色
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マディのおしごと 恋の手ほどき始めます(2023年製作の映画)

3.5

年代、性別、貧/富(※1)、地元民/移住者、陽キャ/陰キャ、さまざまな境界を越える奇縁友情譚。これは案外、パワーバランス等のチューニングをいじくれば『カラオケ行こ!』に近かったりして(特に序盤)。>>続きを読む

イリュージョニスト(2010年製作の映画)

3.5

変わってゆくものと変わらないもの。
その両方を見つめたとき、ふたつを結び付けるものを魔法と呼ぶことに気付くのだろう。

あなたに降る夢(1994年製作の映画)

3.5

「奇跡は、たまーに起こるのです」。

一枚の当たりくじによって結びついたふたり。しかし、宝くじはあくまでも天使が背中を一押しするきっかけの一つであって、その前にちゃんと彼は彼女を、彼女は彼を見つめてい
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劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024年製作の映画)

4.0

烏野VS音駒、因縁・念願・眼光炯炯の一試合。

90分の中に詰め込まれ展開する一挙手一投足が彼らのこれまでの物語を語り、敵も味方もなく引き込まれる。
むしろ今作の主の視点は音駒側(研磨・黒尾)にあると
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

四捨五入すると『マリー・アントワネット"2"』。

プリシラがエルヴィスと出会ったのはアントワネットが嫁いだのと同じ14歳、グレースランドはヴェルサイユ、閉塞と退屈の捌け口としての放蕩、そしてやがては
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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ(2017年製作の映画)

3.5

南北戦争時代のアメリカ南部、森の小さな女学院に、ひとりの負傷兵が運び込まれる。斯くして秘密の園の均衡はぐらつき、崩れていく…

まあ案の定、という流れではありつつ、密室空間のパワーバランス変化が味わえ
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ブリングリング(2013年製作の映画)

2.5

…ほ、ぼ、無味無臭!

実在したセレブ宅専門の空き巣グループ、《ブリングリング》の顛末が語られるクライム×青春モノ。

空疎で短絡的な物欲・承認欲から窃盗行為が明らかな時限爆弾的にエスカレートしていく
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.0

あのぅ、これは大暴投であることを承知なのですけれど…もしかしてクリストファー・ノーランさんって、『オッペンハイマー』に向いてなくない…っすか?

さてまず初めに、この評価は「ヒロシマ・ナガサキ描写がヌ
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マリー・アントワネット(2006年製作の映画)

3.5

ごっどせーぶざ…?

S・コッポラ監督の長編3作目は、なんと歴史モノだった。
『VS』『LIT』(※1)と、どちらかといえば小作りでインディー感の強い作家だったのが、ここに来て伝記、しかもヴェルサイユ
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インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.0

「悪魔に眉毛を売り渡した女」ことミア・ゴス怪進撃、間違いなく今年の《ごきげん枠》です。やったぜ。

やっぱりわたしの映画ライフにはエログロが必要なんだと強く再認識すると同時に、エロandグロでもエロo
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.0

『Translation』の捉え方によって、いくつかの解釈ができるタイトルだと思った。

まずひとつは『翻訳』の意で、タイトルは『翻訳の過程で失われてしまったもの』ってニュアンスになる。これはそのまま
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

『恋はデジャ・ヴ』に『バタフライ・エフェクト』…例を挙げると切りがないほど、「もしもあのときこうしていたら」を題材にした恋愛映画は数多ある。

というかそもそも恋愛ものに限らず、映画それ自体が様々な《
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ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)

3.5

「先生は十三歳の女の子だったことはなかったでしょ」

このセシリアの言葉が、今作のすべてを表している。
彼女は自ら命を絶ち、やがては4人の姉たちも後を追うことになるわけだけれど、その直因は最後まで明ら
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ポップスが最高に輝いた夜(2024年製作の映画)

4.0

遠い昔、あらゆる人間の髪型がフワフワだった銀河系で…

世紀の名曲『We Are the World』誕生のとき、そこで何が起こっていたのか。名実共に中心人物であったL・リッチーを軸に、その(What
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ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)

3.5

「ちょっと君、教会建ててきて。アイスランドに」
「…おかのした」

というわけで、大ブラック無茶振りを食らった若神父が孤独地獄旅へどんぶらこ。その先で今作が描き出すのは、あらゆる争いが起こる本質ともい
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猫とピットブル/キットブル(2019年製作の映画)

3.5

ねこといぬ、ひとりぼっち同士の出会い。

特にねこの方はかなり見た目がディフォルメされてるのだけれど、おうちにn家主(ニャぬし)がいる等ねこ解像度が高い人であれば、細かい仕草の再現度に気がつくことだろ
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暗殺の森(1970年製作の映画)

4.5

哲学とハサミは使いよう。

…しかしなんて美しい映画なんだ。美しい、ってのはワードとしてちょっと大きすぎる気がして普段あまり使いたくないのだけれど、ここまで極まってたら致し方ないんじゃあないか。ベルト
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ゴーストバスターズ/フローズン・サマー(2024年製作の映画)

3.0

たとえるなら、これは欲張って盛りすぎたバイキングのプレートである。
やめとけって言ったのに案の定食べきれず、ほらどの料理も「冷めて」しもたやんかええ加減にしときや。

つまりなにがマズかったかってーと
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