レインウォッチャー

ゴーストバスターズ/フローズン・サマーのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.0
たとえるなら、これは欲張って盛りすぎたバイキングのプレートである。
やめとけって言ったのに案の定食べきれず、ほらどの料理も「冷めて」しもたやんかええ加減にしときや。

つまりなにがマズかったかってーと明々白々、「やることが多すぎる」に尽きる。
120分尺の中にプロットが過剰に詰め込まれていて、どれもが中途半端に終わってしまっているのだ。

そんな今作のToDoリストはざっと以下。

①オトナだと認めてほしいフィービー(M・グレイス)の話
②ゲイリー(P・ラッド)が真の家族=父親になれるか?の話
③市長に目をつけられ、ゴーストバスターズは存続できるか?の話
④ゴースト保管庫が一杯で溢れそうだけど大丈夫?の話
⑤レイ(D・エイクロイド)を中心にした、ベテラン組がもう引退すべきか?の話
⑥フィービーと交流する少女ゴーストがあの世へ行けるか?の話
⑦ナディーム(K・ナンジアニ)が才能を開花させ祖母の仕事を継ぐか?の話

そして最後のゴールとしての、
⑧氷の邪神ガラッカの正体を突き止めて倒す話

…誰が見ても多いよ!はじめてのディズニーデートプランじゃあねーんだから。

複数のプロットを動かすこと自体は悪いことではなく、無関係に見えた課題が実は本質的に繋がっていることを示したりなんかして、うまくゴールに収束させることができれば寧ろ見応えがあって美しいストーリーになり得る。
しかし、残念ながら今作はそこが散漫なままで、ハテいったい誰が主人公なんだったっけ?てなっちゃう。ラストバトルの場には一応全員集合して、伏線回収した《風》なことが起こったりするのだけれど、継ぎ目が荒すぎるためにまったく盛り上がらない。NYが凍りつくはるか以前に、こちらの気持ちは冷え切っているのだ。

特に⑤は完全にお荷物としか言いようがない。ていうか、前作『アフターライフ』で十分おじおば接待はやり尽くしたはずなので、今作は次世代の物語に絞るべきだったと思う。
とはいえボーナスで出すんだとしても、最後の最後にやべぇもうだめだ!ってなったときの「呼んだかのう?…ゴーストバスターズを!」枠(※1)くらいで良いだろう。

そんなことにかまけてるからどんどん寄り道やおつかいばっかり増えて、せっかくの続投組若手キャラが空気だったりするのだ。兄貴のトレヴァー(F・ウルフハード)とか何してた?お菓子ばらまいてただけじゃなかった?

もったいないと思うのは、ちゃんと断捨離して結びつければ激アツでドチャエモなストーリーが作れそうな《素材》は随所に光っていることだ。
たとえば①と⑦なんてまさにそう。伝統(いわば家業)を継ごうとして焦るフィービーと、継がずに逃げてきたナディームはまたとない鏡像関係にある。丁寧に関係性を掘れば、共に成長する物語が描けたはず。

あるいは何もいちいちしっとりした物語を用意しなくたって、単純にもっとアトラクション映画に振り切れば良かったのかもしれない。冒頭のチェイスシーンとか、お馴染みって感じだけれど良かったもの。

猛暑のNYに寒気が押し寄せてくる展開なんて、いくらでも街を舞台にしたパニック大喜利ができそうなところ、その辺は予告編以上の見せ場はなく控えめで、早々に室内のドタバタへと絞り込んでしまう(ラスボスまでわざわざ家庭訪問しにきてくれる)。これは前作でも同じ傾向を感じたのだけれど、なんでしょうかお金節約してるんでしょうか。

もし次作があるのなら、もっとゆるくてシンプルでアホな映画で良いと思う。グラフィックなんかは悪くないと思ったし、せっかくの良いキャスト陣とIPなので、そろそろ《成仏》させる頃合いであろう。

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※1:あの必殺テーマソングも、こういう場面で流すべきなんだよなあ。