レインウォッチャーさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

Here(2023年製作の映画)

4.0

祖国への帰郷を計画中の青年と、苔の研究者の女性とが出会う。
監督前作にあたる『ゴースト・トロピック』でも《物語未満》と書いたのだけれど、更に削ぎ落されている印象。2人は出会った、しかしSo what?
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

Get Lost。終電を寝過ごして終点まで行ってしまったおかあちゃんが、寒空の下ひとり歩いて帰ることになる話。
そんなごくごくシンプルな、《物語未満》に寄り添う。なんだかとても贅沢な時間の使い方を許し
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

題の通り《眼差し》がキーになる映画で、劇中ではたびたび人物がこちらを真っ直ぐ見据え、そのうちの何人かが瞳を閉ざす。
その理由は各々別々でありつつ、わたしたちが「みて」いるものが映画であることを思い出さ
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間奏曲はパリで(2013年製作の映画)

3.5

要するに「雨降って地固まる(か?)」的な小噺なんだけれど、苦味もしっかり。

畜産稼業の日常を離れて過ごしたパリでの2日間は、あくまでも短い間奏曲。また、続いていく主の舞台へと戻らなければならない。そ
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ユー・ガット・メール(1998年製作の映画)

4.0

遠い昔、『ゴッドファーザー』のうんちくがまだギリ許されていた銀河系で…

監督/脚本のN・エフロンと主演M・ライアンの鉄壁ロマコメタッグは『恋人たちの予感』『めぐり逢えたら』に次いで3回目(※1)、ま
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めぐり逢えたら(1993年製作の映画)

3.5

映画史上、最も優しい男がここにいる。

…は?トム・ハンクス?ノンノン、違いますよ。当て馬役のウォルター(B・プルマン)に決まってるじゃあないですか。
なにせ彼はメグ・ライアンの鼻にコークスクリューを
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回路(2000年製作の映画)

4.0

いきなり当たり前すぎることを書くけれど、「インターネットとはコミュニケーションである」。
いかなるタップ/クリックも、リクエスト(要求)を送ってレスポンス(応答)が返ってくるのを待つ。この本質は対面で
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CURE キュア(1997年製作の映画)

4.5

人を怖がらせる方法は数あれど、黒沢清という人は《空間》そのものを恐怖に変えてしまう。

日常のありふれた室内でも、密に設計された構図・照明・音響…によって、おぞましい空間に仕立て上げる。「ここに居たく
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恋愛の抜けたロマンス(2021年製作の映画)

3.5

恋愛に疲れた男女が気楽な関係を求めてマッチングアプリで出会う、そつなくキュートで程よくえっち、ピンクのわたあめソーダみたいな食感のラブコメ。

2人のキャラクターや出会いの背景などにイマっぽさはありつ
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仮面ライダー555(ファイズ) 20th パラダイス・リゲインド(2024年製作の映画)

3.5

劇中で、俺たちの草加雅人がこんな風なことを口にする。

「人は変わるときもある、だが変わらない者もいる」。

まあこのときの奴の真意は置いといて、これほどこの《再会映画》に相応しい言葉もないんじゃあな
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劇場版 仮面ライダー555(ファイズ) パラダイス・ロスト(2003年製作の映画)

3.5

平成ライダーシリーズの一角、『仮面ライダー555』の劇場版。

当時('03年)は、『エヴァ』や『バトロワ』等が蔓延させた《世紀末風邪》がまだ日本全土で治りきっていなかった時代。だって、ノストラダムス
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鏡の中の女(1975年製作の映画)

4.0

どんな映画が好き?と訊かれたら、日中の素面であれば「えっとおォー『魔女宅』とかでスかねェーッ」とスウェーバックで回避を入れるわたしであるけれども、その実「誰かが段々おかしくなる映画」こそ好物である。>>続きを読む

ある結婚の風景(1974年製作の映画)

3.5

なんでも、《腐敗》と《発酵》は本質的に同じ現象なのだ、ときく。時間をかけて微生物が物質を変化させるのは同じで、その成果物が人間に都合が良いか(食べられるか)どうかだけなのだ、と。

もしかすると、夫婦
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.5

大切なものは、いつも静けさの中にある。
言葉にされないもの、できないものたちが、確かな形をとらないまま心のうちに沈んでいく。言葉は浮きでもあると同時に枷でもあって、時にはその深さに手が届かない。

A
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ボブという名の猫2 幸せのギフト(2020年製作の映画)

3.5

2月2日は「ほぼねこの日」。(※1)

基本的には「前作の残り汁で飯を食う」タイプの続編(※2)であり果たしてこれが語られる必要があったのかはなんとも言えないのだけれどわたしはボブの姿を見ると自動的に
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ベッキー、キレる(2023年製作の映画)

2.5

じゃあ、わたしもキレる。

日本では配信スルーとなった続編、雑すぎる邦題はいったん置いといても、これはWhat the…?AIが考えたん?いや、今やAIならもうちょい賢かったりして。

たぶん、ただ女
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

3.0

人生の意義と夫婦生活、いずれにも悩む初老の男が、旅先で愛するクラシック映画の世界に迷い込む…
という、『ミッドナイト・イン・パリ』とほぼ同じレシピのコメディ。主人公が小説家志望だったり、公私ともに脅か
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カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)

4.5

画面の向こうのあのキャラと触れ合えたら…あるいは、自分があちら側へ行けたら。
映画やアニメ好きなら誰もが一度は頭をよぎったはずの願いを直球で叶えてみた、スウィート&ビター(3:7)なラブコメ…でありつ
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スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)

4.0

のっけからフェリーニLOVE全開、オマージュ超えてパロディ、カヴァー曲よりカラオケ?なW・アレン流『8 1/2』。
ところが豈図らんや、観ていくとただの憧れ・おふざけに終わらない、彼なりのやり方で《呪
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僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

3.5

ひょっとすると、イタイタシさとイトオシさの間にあるものが《愛》なのか…も?

エヴリン(J・ムーア)とジギー(F・ウルフハード)は、典型的な世代の溝を抱えた母子に見える。DVシェルターを切り盛りする母
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もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

3.0

ただの私的感覚の話になるけれど、SF映画には《ますらおぶり》と《たおやめぶり》があると常から思っていて、それでいうと今作は《たおやめぶり》。

想像上の未来という特殊な環境そのものよりは、そこに置かれ
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VESPER/ヴェスパー(2022年製作の映画)

4.0

なんて理想的な、夢に見たようなバイオパンク!

スチームパンクが蒸気機関(スチーム)とテクノロジーが深く結びついたまま進化したアナザー未来を描くSFジャンルならば、バイオパンクは生命科学・遺伝子工学が
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終わらない週末(2023年製作の映画)

2.5

アメリカの抱える被害妄想と罪悪感、あるいはシャマランに高級さを10足して可愛げを100抜いたみたいな映画。

図らずも黙示録meetsファミリーネタとして類似点の多い『KNOCK』を思い出し、今作に比
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レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)(2022年製作の映画)

4.0

フィリピンの若手監督から届いた思わぬ贈り物は、多くの創作者が共通して抱えるであろう《呪い》と、その救済についての映画だった。
ファニーでファジーでファンタジック、でもいつしか感情の波がぐぐっと持ち上げ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

あのぅ、もしかしてヨルゴス・ランティモスさん、死ぬの?

…って思っちゃうほど、まるで遺作級に気合の迸る映画だった。
彼がこれまで追求してきた歪な世界観と、大衆性・芸術性・批評性がまたとない調和でスパ
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ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.5

肉たらしい、いや憎たらしい過激派ヴィーガンどもを殺しまくり食べまくる、痛快・スプラッタ・ブラックコメディだヒャッハー…

…では、ない??
と思いました。というか、ただ「そう」観るのはちょっと危ないと
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アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

3.0

クソデカゲキムズ感情の沼、これが岡田麿里の《世界》か…

ある冬の一日に閉じ込められた工場町を舞台にした青春ファンタジー。
季節は動かず、子供たちは成長せず、寒さや痛みも鈍化した世界。しかし人は環境に
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泣きたい私は猫をかぶる(2020年製作の映画)

4.0

スピッツの昔からDISH//に至るまで、青春のままならなさと猫の距離は近い。
猫なる動物の気まぐれや媚びなさ、つまりコントロールの効かない性格が、「好き」がすれ違う他者との関係に似合うのだろう。

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傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)

4.0

この数年の劇場アニメ周りは『鬼滅』に『呪術』とお祭り続き、特にその作画演出のハードルは騒ぎに乗じて上がるばかり。
そんな中、アニメを観る層も変わって(広がって)きたと感じつつも、「でもこの世には既に『
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傷物語Ⅲ 冷血篇(2017年製作の映画)

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起承転結の《天》・《血》。

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評は総集編『傷物語-こよみヴァンプ-』へまとめ。
同作を経てなお観なおすとすればこれ、主に羽川さん補給的な意味で。

https://filmarks.co
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傷物語II 熱血篇(2016年製作の映画)

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起承転結の《昇》。

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評は総集編『傷物語-こよみヴァンプ-』へまとめ。
https://filmarks.com/movies/112209/reviews/167624644

傷物語I 鉄血篇(2016年製作の映画)

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起承転結の《鬼》。

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評は総集編『傷物語-こよみヴァンプ-』へまとめ。
https://filmarks.com/movies/112209/reviews/167624644

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.0

近年の邦画→漫画原作→ギャグ、とくればほぼほぼリーチな地雷コースを、鮮やかにひっくり返して大当たり!
原作のマナーを壊すことなく、かつ一本の実写映画として適切に更新した幸せな作品だった。JOYSOUN
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葬送のカーネーション(2022年製作の映画)

3.5

寒空の下、家族らしき老人と少女が一つの棺桶を運ぶ。目的地は国境だと老人は言い、歩き続ける。

ふたりは寡黙で、暫くその真意は明らかにならない。
誰の棺桶なのか。
なぜすぐに埋葬せず、国境を目指すのか。
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東京画(1985年製作の映画)

3.0

成る程、これは限界オタク・ヴィム・ヴェンダースさんの《お気持ち表明》動画なのだ、と理解した。何のオタクって、もちろん小津安二郎の、だ。

小津への重すぎる愛を語り、既に彼のいなくなった東京を訪れる。そ
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

スカイツリーのお膝元で起床し、渋谷エリアのトイレ掃除へ。日々、東京の東西を往復する中年男・平山(役所広司)の規則正しく慎ましやかな生活。
彼のルーティーンの中には読書が含まれ、劇中では何冊かのタイトル
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