レインウォッチャー

海賊になった貴族 シーズン2のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

海賊になった貴族 シーズン2(2023年製作のドラマ)
4.0
前期では誤解を残したまま離ればなれになってしまった、海賊紳士・スティードと黒ひげ・エド…
…は、割と早めに再会するのだけれど、そこがゴールではない。2人と彼らを取り巻くクルーたちは、それぞれの幸せを探し始める。

「他にやることがないから」選んだ海賊という生き方に、もっと別の姿があっても良いはずだよね。そんな漠然とした願いを、皆が自らの傷に向き合いながら少しずつ形にしていく。

それは、海賊としては(人としても、か)異端で落ちこぼれであるはずのスティードからの影響であることは少なからず確かで、めぐる縁の奇妙さと大切さを感じさせる。

最も変化したのは、ずっと船のヒール役だったイジーだろう。
彼がエドへの拗れた愛情を認めて以降、憑き物が落ちたような表情を見せる。そして、実は美声、みたいな新たな側面も見せてくれるのだ。

今期でとても印象的な台詞がある。
5話でスティードがエドに言う、「君は死にかけたって何度も言うけど、生き延びたことについては何も言わないね」。

この指摘はイジーの変化とも重なって、ひとつの悟りの可能性を示す。物事の良い面を見ること。良い意味で、執着を捨て自由になること。それはイジーが失ったもの、そして代わりに得たものにもよく現れている。

この言葉が意味を成すには受け入れるだけの強さが必要になるわけだけれど、このシリーズはずっとそのプロセスを丁寧に描いてきたので、ちゃんと説得力を持って響く。やはり、前を向くためのシーズンだったのだと思う。

シーズン3が打ち切りになったという残念なニュースもありつつ、ファンの人気は根強く署名活動が起こったりもしたとのこと。
幸い今シーズンはキリの良いところで終わるため、宙ぶらりん感はない。可能性を信じながら、彼らを見習って前に進むべきなのかも。

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毎回ED曲のセレクトが粋なこのシリーズ、3話の『This Woman's Work』(Kate Bush)はその白眉。様々な含意を受け取ることのできる詞だけれど、ここではピュアで美しい、誰かに捧げるためのラブソングとして鳴らされている。