ルーク大佐

1883のルーク大佐のレビュー・感想・評価

1883(2021年製作のドラマ)
4.3
名作『イエローストーン』の前日譚だが、本家に負けない熱さと非業さを備えた傑作だ。『地獄の黙示録』を思わせるような過酷なロードムービーであり、人の善悪、狂気、意思の強さが丁寧に描かれる。

なぜ思春期の破天荒なワガママ女子を主人公に据えるのか。硬骨漢オヤジや強心臓ママの視点で描かないのか。そんな疑問を前半は抱いたが、中盤以降は娘が圧倒的な存在感を放ち、ストーリーを引っ張っていく。夢見がちな10代のポエムもずっしりと響いてくる。

ドイツ移民が新天地モンタナを目指す中、休む間もなく訪れる悲劇の連続。それでもモンタナ(=天国)へ向かう意思は衰えない。敵は大自然、盗賊、原住民、病、毒蛇……夢と現実。善悪の基準。自由と責任。広大な大自然を背景に家族愛の深さや人が生きる意味を問いかけてくる。

ラストの締めくくり方にはあまり共感できなかったが、イエローストーンシリーズでダットン家が頑なにあの土地を守ろうとする理由はわかる。
後にダットン家が先祖代々引き継いできた〝記憶遺産〟のようなお宝を描いてほしかったかな。感傷的な弦楽メロディーの使い方も抜群にセンスがよかった。前日譚の次回作『1923』、本家の新シーズンが楽しみだ。
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