よう

THE DAYSのようのレビュー・感想・評価

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
4.0
あの時の福島第一原発事故を描いたドラマ。
映画『Fukushima50』と同じ原作。
わざわざこれを原作にする必要あるのかなってチラッと思うけど、このドラマ、実際に『吉田調書』なども参考にしているらしい。


『Fukushima50』については、ベント作業のくだりまではけっこういいとは思って観てたけど、終わりに行けば行くほど余計な描写(娘のエピソードとか米軍司令官の回想とか)が増えてくことと、バランス的に美談を強調する形だったことで、自分は好印象ではなかった。
現場作業員の方々には頭が下がる思いはあるけど、そこだけであの事故を振り返るのは事故を矮小化してるようにも見えちゃう。
桜満開シーンで終わっていい話じゃないでしょっていう。


このドラマ、けっこうドラマ性を抑えている印象。話としてはあんまり脚色を加えてない感じ。
加えて、作業の一つ一つをじっくり見せたりしていて、裏を返すと話運びのテンポは遅い。
そこらへんは評価が分かれる要因かと。ロッテントマトの批評家による数字がイマイチなのは、そのせいなのかな。

自分は、テンポの悪さについてはわからんでもないけど、抑制された作りについては好印象。
原発事故の話を現状あまりエンタメエンタメしたトーンで見たくないんよ。それよりはドキュメンタリックな作りのほうがいい。
所々で芝居の間が長く感じるシーンはあるけど、割と重たいくだりのときにそうなるので、ありかなと。


ホラー的な恐怖表現。
監督の一人が中田秀夫さんで、だからなのかホラー的な描写が特に序盤は多い。
遠くから津波が来るところとか、閉所に水が浸水するのとか、けっこうたっぷりじっくり描写している。
3号機爆発時の自衛隊描写もけっこうたっぷり。
最終話まで、この怖さのあるトーンが割とずっと続くのはよかった。


映像面では、原発施設内のセット?がほんのり安っぽいのは気になった。中央制御室がなんか狭そうだし。
あと、VFXが映画版よりは見劣りする。原発の外観のショットと、当時の映像とで差があるように見えちゃう。
そのせいで画面全体がチープに見えかねない。


行方不明となった東電社員2名を出してあるのはよかった。
そのうちの一人の家族が毎回出てくるのだけど、そこは毎回じゃなくてもよかったかなあ。

やっぱり怒りん坊キャラで描かれる首相。
映画版と同様、常に機嫌悪そうで「どうなってるんだ」と周りに恫喝気味で詰めてくる描写がほとんど。
そこはちょい繰り返しすぎ? というか、官邸サイドを出しすぎかも。
『シン・ゴジラ』みたいに誰もハッキリしたことがわからないまま「ああしろ、こうしろ」と言い合う描写はいいのだけどね。


このドラマ、好感を持つのはその終わり方。
特にカタルシスを感じさせるようには終わらず、「この問題は今もなお続いていますよ」的に終わる。実際、原発は暴走はしなくなったことで何とかなった形だし、廃炉作業はずっと続くわけだから。
『Fukushima50』ではエンドロールで片づけられてたところをこのドラマではしっかり語られてる。こういう終わり方をしてやっと中立的と言えるのだと思いますけどね。
同じく桜満開シーンも出てきてるけど、その使い方の違いたるや。ここがあるだけで、映画版より好感を持つ。
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