レインウォッチャー

ウェンズデー シーズン1のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ウェンズデー シーズン1(2022年製作のドラマ)
4.5
間違いなくこの10年で最高の厨二病患者量産ヒロインが爆誕した。

ティム・バートンとアダムス・ファミリー、なんていうこれ以上ない取り合わせへの期待に十分応える。もし自分が去年死んでたとしても、墓場から這い出してNetflix契約したことだろう。

「のけ者」(outcast。もっと良い訳語なかったんかとは思うが)が集うネヴァーモア学園に編入することになったウェンズデーが、学園を脅かす殺人事件と自身のルーツにまつわる謎に挑む。
ブラックユーモア盛り盛りのミステリーでありつつ、なんだかんだ友情に恋愛といった青春イベントを押さえていくところがにくい。総合した印象はジュブナイルだ。
また、映画ネタやエドガーアランポーネタなんかがばら撒かれた細部を拾う楽しみもある。

ウェンズデーは、個性的な面々が集う学園においてなお周りと交わらない圧倒的個性を持っていながら、親のコピーになりたくない、といった歳相応の反抗期を迎えてもいる少女。
この設計が王道だし、アクションから小説執筆にチェロ演奏というハイスペック具合、そして気づけば周りのみんなウェンズデーが好き…というハーレム形成力など、全国の教室隅っこフレンズにとって夢のようなキャラクターだ。それに、白人以外が演じるゴスっ娘として価値あるサンプルでもあるだろう。

しかし単にウェンズデー無双なわけではなく、才能があろうとも彼女は失敗し、悩み、反省する。時には諦め、受け入れて糧にしながら、しかし自分は失わない。
アウトサイダーであることを恥じず生きろ、しかしそれには覚悟が必要なんだ、腐るないじけるな、というメッセージが、彼女の姿にはある。上に厨二病量産と書いたけれど、同時に厨二病救済でもあると思うのだ。(因みに、このマインドに反して他者のほうを自分の思い通りに変えようとする存在こそが今作のヴィランといえる)

また、のけ者を集めたら結局そこにもまたヒエラルキーが生まれる、という学園の設計なんかも興味深くて、随所から決してエアプでは到達できない多様性表現、アウトサイダーマインドの層と業の深さが感じられる。このあたりはバートン先生の(久々の?)面目躍如といったところだろう。

さてここまで書いて何だが、わたしの最推しはウェンズデーのルームメイトにして対極的な性格の人狼少女、イーニッドである。
10代の頃にこれを観ていたら間違いなくウェンズデーに頭と胸を支配されていただろうけれど、大人になった今ではイーニッドのような存在がどれだけ価値的かが良くわかる。

彼女はコミュ力おばけのメンタル強者に見えて、状況を常に感じ取ろうとしている努力家だ。その点がウェンズデーとの共通点でもあって、深いところで結びつけているのだと思う。

シーズン2(絶対あるよね?)で2人に再会できる日を楽しみに待ってる!

※イーニッド関連の展開についてどうしても文句をつけたいところが一点だけある。コメント欄にて。