中島晋作さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ムービー・オージー(2009年製作の映画)

5.0

歯磨き粉、石鹸、シリアルなどのCM。ニクソン大統領、ベトナム戦争、核爆発のニュース映像。巨大イナゴ、巨大蜘蛛、巨大人間、巨大鳥。
“strong medicine for sensitive peop
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

1.2

いわゆるスローシネマ。特に都市空間における移動のシークエンスに顕著だが、ヒーリング的な効果を生んでいる。癒しとしての映画というわけだが、スローであることが、加速主義的な現代に対する映画のオルタナティヴ>>続きを読む

すべて、至るところにある(2023年製作の映画)

4.0

失踪する映画監督、という主題は前作に続いて現れる。この映画監督は、各地に点在するモニュメントに異常な関心を示している。物質は残るが映画は残らない。空洞的な都市風景はアントニオーニ的。

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.3

16ミリで撮られているのは、画面に映るあらゆる光を際立たせるためなのか。街灯、懐中電灯、星。ただ、少し光のテーマを反復し過ぎている。わかり易すぎる。商業映画だからいいのか。「外で話せない?」と言われて>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.5

あまりに説話的で、少し悪い意味で、エリセのなかでは例外的にわかりやすい。フィルムへの郷愁にムルナウやニコラス・レイを持ち出すところなど通俗的ですらある。もっとも優れたショットは冒頭の数カット。デジタル>>続きを読む

冬の夜の神々の宴-遠山の霜月祭(1970年製作の映画)

4.5

長野県遠山郷の霜月祭。農民一揆によって皆殺しにされた遠山家の怨霊を鎮める。仮面の踊り手には遠山家が重ねられているらしい。当たり前だが画面に血生臭さなどなく、笛の音がむしろ牧歌的に響く。夜を徹して、とい>>続きを読む

マハゴニー(フィルム#18)(1980年製作の映画)

4.8

都市生活の断片と、ところどころに自然風景がモンタージュされる。雑踏、室内、電話、空ビン。楽しみにしていたあやとりの部分は、それがどの地域所以のものか説明はないが、人間が歩いたり、鳥が羽ばたいているよう>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

2.0

広角レンズを室内外問わず多用している。小さな穴から覗き見るような画角も頻出する。ハンナ・シグラに似ている人が出てると思ったらハンナ・シグラだった。指輪物語のゴラムまで出てきて衝撃を受ける。
獣から人間
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

1.9

ヴィットリオ・ストラーロは、基本的に映画全体の基調色を黄昏時のオレンジ色に設定している。その画面のなかで、死にたい人などいない、と平然と登場人物に言わせてしまうアレンの陽キャ性。陰キャと見せかけて実は>>続きを読む

ふたりの長距離ランナーの孤独(1966年製作の映画)

4.5

64年オリンピックの「反」記録。ランナーの闖入を無限に反復する。音楽は鳴り止まない。

吸血鬼(1956年製作の映画)

1.8

さすがにこの映画をバーヴァの作品だとするには抵抗がある。女性が老けてゆくのをワンショットで捉えている。女性は鏡に写る自分の姿に耐えられず、拳銃で鏡を撃つ。パリが舞台でみんなイタリア語を喋る。

みなに幸あれ(2023年製作の映画)

1.0

古川琴音が通行人を助ける場面が序盤に2回ある。映画全体として、都市と田舎、若者と老人、といった二項対立を脱する要素は見られなかった。老人の描写に関しては、タイ・ウェストの『X』を想起させる。

テンション(1949年製作の映画)

2.3

眼鏡からコンタクトレンズに変えることで別人になろうとする。片方のレンズが割れた眼鏡、陰気な青年の暴力性など、少しペキンパーを思い出す。映画全体の興味は、あくまで物語に向けられている。

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.6

主演男性2人の恋愛映画。黒いスーツのヤクザと白いワイシャツの学生、2人の服の色が反転し合う。違う色だけど同じ、という演出。
映画は動画ではない、映画は巻き戻せない、と言う。そして映画部は廃部になる。

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)

2.2

前作にあったアクションの躍動は失われている。ドローン撮影の多用なども気になるが、そもそも前後のカットが繋がっていないシーンが散見される。最後の直接対決でかろうじて身体の動きが活性化し、映画が息を吹き返>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

1.5

川の流れる音をイヤホンで聞く女性のショットから始まる。聞くことの映画として提示される。人が喋るときに吃ったり、沈黙したりするときに、彼らに耳をそばだてることを観客に要請しているように見えた。カタストロ>>続きを読む

暴力の街(1950年製作の映画)

4.3

冤罪のメキシコ系移民と暴徒化する白人。未舗装の傾斜面を降りてくる群衆の、石を踏みつける足音が不気味に響く。新聞記者が車から少年を見送るとき、少年が挨拶し、車から降りて玄関先で母親と再開するまでを、主人>>続きを読む

アンダーワールド・ストーリー(1950年製作の映画)

4.7

ダン・ デュリエといえば『スカーレット・ストリート』の暴力ヒモ男なので、真実を追い求める正義の新聞記者とはならない。それでも最後には、この悪役俳優も悪ではなくなる。路地に現れる複数の人間の影。車内に放>>続きを読む

狂った触覚/激愛!ロリータ密猟(1985年製作の映画)

4.5

85年の新宿。佐藤さんの映画ではポスターや映画館がよく映る。よくわからないタワーができる前の歌舞伎町。街の映画だが、密室の映画でもある。室内で身体を解放し、街へ飛び出す感じ。

眼球の夢(2016年製作の映画)

3.9

目の超クロースアップ、目隠し、サングラス(PANTA)。眼球を撮る写真家が薬に溺れ、眼球に対する執着、フェティシズムを増幅させていく。生と死の狭間である樹海に佐川一政が横たわっている。カメラのレンズが>>続きを読む

浮気妻 恥辱責め(1992年製作の映画)

3.6

佐川一政はほんとうにこの映画に必要だったのか、という問題はある。ビデオカメラ、あるいは監視カメラからの視点。常に人間は見られる対象だが、その人間自体はアイマスクやサングラスをかけていて、ほとんど盲目的>>続きを読む

火だるま槐多よ(2023年製作の映画)

4.0

無惨な失敗作だと思う。けど、意欲的な失敗作というか。
自分が別人だと盲信してしまう。ほんとうの自分はあまりに醜い。生きた印を残すためではなく、生きた痕跡を消すために生きてるのだと言う。拘束からの解放と
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ボディ・アンド・ソウル(1947年製作の映画)

4.2

最初に映るサンドバッグがゆらゆら揺れていて、その影が不気味に見えてくる。首吊りのように見える。主人公の周りの人間は次々に死んでいく。人は皆いずれ死ぬ、と繰り返し言う。

大いなる夜(1951年製作の映画)

3.8

拳銃を持ったまま赤ん坊を抱える。ドラムを叩く姿に仇の姿が重なる。孤独を抱えたままでいることにたえられず、心打たれた歌手に会話を試みるが、無惨に失敗してしまう。ドリュー・バリモアの父が主演で、彼がとても>>続きを読む

ハリウッド・テン(1950年製作の映画)

3.8

一人一人の顔を正面から捉えている。ところどころで小説、ポスター、あるいはオスカー像などのショットが挿入される。

キエフ裁判(2022年製作の映画)

3.4

過去作(『バビ・ヤール』)のフッテージを繰り返し用いている。このような作劇はもちろん前例があるが、ここまで露骨なのははじめて見た。

アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー(2022年製作の映画)

4.0

雪男がタバコ吸ってるエピソードで数分笑ってた。アメリカ映画最高。

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.5

西部劇と言われて連想されるような約束事のほとんどすべてを退けている。馬ではなく牛、発砲はオフスクリーン。暗闇を凝視するのは過去作から頻出する。作家的刻印。
ドーナツにシナモンをふりかけたり、ケーキ生地
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.5

有名建築家が手掛けたトイレばかり映る。プロデュース、および脚本には電通が関わっている。渋谷という街は今、恐ろしい速度で醜悪な何かに変貌しているわけだが、意図せずヴェンダースが、「おしゃれなシブヤ」的イ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.2

男女のはじめての出会いや、退院後の再開シーンで正面切り返しを使う。古典的だが、効果的だと思う。
中年労働者階級の恋、病院で横たわった男性とそばに座る女性の構図など、構成が『不安は魂を食いつくす』に酷似
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霧笛(1934年製作の映画)

4.0

横浜港に着く船、外国人の顔のクロースアップ、その連鎖。最初は白人の靴磨きをしていた日本人が、その白人が写った肖像写真を靴で踏みつける。神として君臨していた白人が、ただの白人になるまで。

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

1.1

夫婦の断絶をスプリット・スクリーンで示すという発想はいかにも安易であり、冒頭5分で映画の全容が把握できてしまう。それゆえに残りの140分程が蛇足に感じられる。これが15分の短編ならまだよかった。技巧に>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

2.1

ナポレオンは常にハンカチを携帯し、感情が高ぶるとそれを顔にあてる。ナポレオンを弱い男性として描く試みだが、それが適切だったかは疑わしい。合戦は当然盛り上がらない。盛り上げたらナポレオンの弱い男性像と矛>>続きを読む

月夜鴉(1939年製作の映画)

4.4

原作:川口松太郎、脚本:秋篠珊次郎、依田義賢。その脚本ゆえ、クライマックスはほぼ溝口や成瀬の芸道物に重なる。「浮気もしないような芸人の面汚し」、「芸人は自惚れなさい」などと言う。

我が家の風(1943年製作の映画)

4.3

助監督:鈴木英夫
家の壁に歌を書く中田弘二。海を眺め、その後に割腹自殺。飛行兵を目指す彼の子供。退役中将いわく、日露戦争で死んだ者たちが、太平洋戦争において蘇ってくる。戦争が始まったことに嬉し泣きする
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バッド・デイ・ドライブ(2023年製作の映画)

3.7

夫婦の断絶を、決して交わらない視線の平行線として、ワンショット内に示す。家族の関係修復は、車のバックミラーを介した切り返しショットとして表される。リーアム・ニーソンの表情は、今作に至っては常に憔悴して>>続きを読む