Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ミュンヘン(2005年製作の映画)

3.9

ロッド国際空港が名前付きで強調されている。岡本公三らが空港で26人を殺した乱射事件の数ヶ月後、当局に拘束された岡本らの解放を求めて起きたのが、今作の描くミュンヘン五輪事件だ。昨年、重信房子の出所を喜ぶ>>続きを読む

太陽の帝国(1987年製作の映画)

3.7

攻撃する米軍、攻撃される日本軍、巻き込まれる英国人、三者の立場を同時に描く「戦場にかける橋」のような作品だ。デヴィッド・リーンが監督する話もあったらしい。

この映画は分かりにくい。戦場にかける橋は三
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モンティ・パイソン/人生狂騒曲(1983年製作の映画)

3.3

歴史に残る下品さだとバビロンが盛り上がっているようなので、自分が知る中で最も下品なトラウマ映画を久々に見返した。

メンバーが全員揃った劇場版としては最終作となる。スケッチ(コント)を並べて何となく話
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ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

3.7

順当にステップアップしていて嬉しい。「よくわからない昔の人々」に没入させ、逆説的に現代性を立ち上げる。目に見えて予算が増えた新作でも、ロバート・エガースの作家性は変わらなかった。

「ウィッチ」「ライ
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バビロン(2021年製作の映画)

3.1

今まで好意的に見てきたのだけど、チャゼルの悪いところが出ていると思った。この映画が必要な人もいるのかもしれないが、私には関係のない内容でした。

映画の裏に流れる混沌、感情、技術、歴史。群盲象を評すと
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ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)

3.3

初のトーキー映画の題材が「ユダヤ人によるブラックフェイス(黒塗り)パフォーマンス」であることは、アメリカのエンタメ史を踏まえると非常に示唆的だ。歴史の話が多くなります。

(というのも、映画としてはち
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カラーパープル(1985年製作の映画)

3.7

黒人男性による黒人女性への暴力、マイノリティの分裂を巡る話を、生き別れになった姉妹を軸に仕上げている。

終盤、教会から聞こえるゴスペルに、酒場にいた歌手のシャグはブルースの演奏を止める。教会へ歌いな
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トワイライトゾーン/超次元の体験(1983年製作の映画)

3.5

第一話「偏見の恐怖」
監督はジョン・ランディス。レイシストのおっさんが戦時下のドイツ、KKKの集会、ベトナム戦争の戦場にタイムスリップし、ひたすら酷い目に遭う。
わかりやすく、テンポよく進むが、主演の
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ヒート(1995年製作の映画)

4.0

パワーバランスが何度もひっくり返る楽しさ。優位な状況がちょっとしたセリフやアクションで簡単に逆転される。

同一ショットにパチーノとデニーロはほとんど収まらず、一方的に見る。前半はどちらかが屋上から相
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ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)

4.3

盆と正月映画。脳みそからっからになり、休憩時間に食べたアイスクリームが美味かった。

「これで亡霊が演じられる」。人は死んでも演じ続け、愛や呪いとして漂う。仮面を付け替え、何度でも現れる。しかしハムレ
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秋のソナタ(1978年製作の映画)

4.0

不倫して芸術を追い求め、世界的なピアニストになった母親をイングリッド・バーグマンが演じる。英語でマネージャーと電話する場面など、メタ要素を取り入れてベルイマンが当て書きしたらしい。

(というかバーグ
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

仲良いつもりだったのに わかる

・劇作家、脚本の人だと改めて思った。役者の魅力と意外な展開、ロケーションで映像を持たせている。社会から浮いた寓話なのは良いが、編集や撮影でもう少し引っ張って欲しい。ド
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ヴィデオドローム(1982年製作の映画)

3.8

冒頭30分で大傑作の予感をさせつつ、最後は小さくまとまってしまうのがもったいない。

・エロ写真にピザのケチャップがついたのを雑に拭き取り、キッチンを去る。直後に監督名。至る所に欲望が転がり、感覚が麻
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鏡の中の女(1975年製作の映画)

3.3

いやー、これは合わなかった。ベルイマンでこんなにハマらなかったのは初めて。

精神科医(リヴ・ウルマン)がある事件をきっかけに自殺未遂を起こし、精神世界と現実が混濁し始める。

元々3時間のテレビドラ
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夏の遊び(1951年製作の映画)

4.2

美しい自然と都市の対比、瑞々しい恋愛と顔のアップ、夢と現実の間で起きる時制の混乱(野いちご食ってる)、コスチュームプレイを取り入れた非日常空間の侵蝕、顔半分で描く分裂した内面、死で直面する神への不信、>>続きを読む

ある結婚の風景(1974年製作の映画)

3.8

ファニーとアレクサンデル最終上映に向けてベルイマン復習中。

夫婦の破綻と復活?を描いた各50分×全6話のテレビドラマ。各話ほぼワンシチュエーションのドロドロ会話劇。演劇に近いが、編集と演技力で映像と
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Mr.Children 「GIFT for you」(2022年製作の映画)

2.4

原曲アレンジのAnyが映像化されたのは言祝ぐべきことだし、留学中にAny聞いてたニキは俺かと思った。「ここにいないあなた」に向けたYour Songも、GIFTももちろん泣けた。

しかし作品としては
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スキャナーズ(1981年製作の映画)

3.6

お腹の胎児から超能力攻撃を喰らって鼻血が出る映画は世界中でもスキャナーズくらいだろう。

昨年の「TITANE/チタン」は妊娠に伴う体型の変化、肌が裂ける感覚が、自己認識を壊していくというボディホラー
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.8

切り返しがなく、誰かと会話が成立するなんて欺瞞は許さないし、引きの自然の中にポツンと残される場面も多い。引用の洪水の中で、ベルモンドの肉体が連続していることだけが頼りになる。

あらゆる物語は既に表現
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.2

コメント欄に2022年のベスト10を載せました。

体の傾きや姿勢の高低、動作の一つ一つが美しく、3DCGのリアリティと、漫画的にデフォルメされた二次元表現の組み合わせが素晴らしい。空間描写が巧みだか
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

4.0

おとぎ話風にアレンジした映画よりも、普通におとぎ話を作った方がデルトロの良さは発揮できるのではないか。映像も脚本も、正しい選択肢を引き続けていた。

・ピノキオが酔った勢いで作られた設定なのがとても良
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ヨーヨー(1965年製作の映画)

4.2

満席のイメフォの最前列で見るというより見上げていたが、面白いことが絶えず起きていて、ずっと見ていられる映画だった。教育テレビとかで延々流してほしい。かつてのサイレント映画を表面的になぞるのではなく、ア>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

4.5

恐怖と無力感で涙出てきた…。

柳下毅一郎さんが同種のコメントを寄せていたが、笑えないほど「香港映画」然としていることに衝撃を覚えた。残酷な青春映画の香りがした。

映像の希少性、厳しい現場で取材に徹
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ニューオーダー(2020年製作の映画)

3.5

ハネケのような乾いた暴力、嫌な人間描写を、男性中心の家族関係から、国家権力による抑圧へと結ぶ映画。露骨な性暴力と、信頼関係をガタガタにされる展開がキツい。

日常の小さな暴力が社会に広がる、緩急の付け
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グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.9

「語るべき物語」を求めて緑の騎士の首を斬った男が、一年後に首を斬られる約束をさせられ、緑の騎士の住む礼拝堂まで旅をする、という変な話。以下、俺解釈です。

▽ファイトクラブ
最大の特徴は、主人公ガウェ
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ひつじのショーン スペシャル クリスマスがやってきた!(2021年製作の映画)

3.6

マッドゴッドでクレイアニメが見たくなったので鑑賞。昨年末公開の中編。

人間含め全員が「鳴き声」しか話せない縛りを設け、アクションや表情でストーリーを描いているシリーズ。動き続ける映像、行って帰ってく
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マッドゴッド(2021年製作の映画)

4.0

様々な怪獣映画の感想で書いてきたが、コマ撮り特有の可愛らしさと不気味さ、ミニチュアがぐしゃあと壊れる映像の快楽に浸れて、ひたすら気持ち良かった。特権意識と虚しさが入り交じった狂った神。何度壊れても作り>>続きを読む

男はつらいよ 柴又慕情(1972年製作の映画)

3.7

人生初寅さん。お正月にBSでやっていた。話のフォーマットは何となく知っていたが、文脈分からなすぎて皆さんの感想を読んでふむふむ…となっている。

・クライマックスで寅さんが「今夜は流れ星が多い」と言う
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LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.5

演出が素晴らしいのは知っているのだが、深田晃司らしい世界から一歩も外に出てこないというか「深田晃司っぽい映画」をAIに頼んだら出来そうな映画というか…。いつも大絶賛なんですが、今回は驚きが少なかった。>>続きを読む

風の中の子供(1937年製作の映画)

3.8

・子供の運動は自由の発露であると同時に、声にしない痛みの表明でもある。

子供と大人の区別は常に明確だが、橋の上で母親が三平に寄りかかるシーンで交差する。三平は絶望を言葉ではなく、やはり体で受け止める
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有りがたうさん(1936年製作の映画)

4.0

今年の映画館初めは清水宏特集。

田舎から東京へ売られる娘と、バスの運転手「有りがとうさん」、乗り合わせた客によるロードムービー(駅馬車っぽい)。バスは山間部の様々な人生をかすめていく。時代は戦争直前
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聖なる証(2022年製作の映画)

3.5

前から思っているのだが、フローレンスピューは体に存在感がある役者だ。ご飯を食べる役が似合う。料理好きらしく、インスタライブで料理やってる姿を見るのが以前のマイブームだった。最近やってくれない。待ち望ん>>続きを読む

サイン(2002年製作の映画)

4.2

あけましておめでとうございます。狙ったわけではないのですが、今年最初で、1000本目の感想です。

物語を信じることについての映画。何度も見返している大好きな作品。

シックスセンスで「伏線回収の人」
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.1

ろう者の方の苦労と全く次元が違う話ですが、大概私も1日の大半を無言で過ごしている人間でして、喋れないケイコに自分を重ね、ぐちゃぐちゃのメモを閉まってジムに入るとことか、試合での叫びとか、かなり泣いてし>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.8

IMAXレーザーGTで見たが、早よ海行け殺人魚見せろと思っているうちに最初の方ちょっと寝てしまった。展開は驚くほど古典的で問題含み。多少の寝落ちは問題なく、海に出てからは楽しかったです。のけ者扱いだっ>>続きを読む

こころの通訳者たち~what a wonderful world~(2021年製作の映画)

4.0

ちょっとビックリなドキュメンタリーでした。凄かった。

かなり多層的な映画で、インセプションを見ている気分になりました。ネタバレ気味ですが、いろんな人に見てほしいですし、作品の魅力を損なうものではない
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