Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

11歳の娘と、娘の素敵なバカンスを演出する父がそれぞれ撮影した映像に、父の死の兆候を探す現在の娘の想像が入り混じる不思議な映画。死を悟らせまいとする父、何も見ていなかった自分、見ようとする自分、3視点>>続きを読む

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

3.2

メリーポピンズ続編とリトルマーメイド実写化をロブ・マーシャルに発注するディズニーがおかしい

アニメは飽きるほど見た世代なので公開初日に行きました。フランダーがどれくらい魚なのか楽しみにしていたがマジ
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怪物(2023年製作の映画)

3.4

第3幕だけで2時間見たかった。やっぱ子供を撮る是枝さんが一番見たい

悲痛な魂を救う「昇魂」か、地下に弔う「鎮魂」か。街の俯瞰、学校の吹き抜け廊下、火災の野次馬など、大人が見下ろす視点に縛られ、子供の
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STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー(2023年製作の映画)

4.0

Still 静止
走り出したら止まれない子供だった。いじめから走って逃げた小柄な少年が、成功を掴む。パーキンソン病を患いながら、それを隠して演じ続けた日々、告白後の生活を描くドキュメンタリー。

スラ
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ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年製作の映画)

3.9

ファスビンダーは食わず嫌いしてほとんど見てこなかった。彼が影響された監督にはサークを始め、ウォルシュやオフュルスなど尽く私も好きな名前が並んでおり、「〇〇っぽいな〜」が先に来てしまってどうも作品に入り>>続きを読む

軍旗はためく下に(1972年製作の映画)

4.0

戦争で有耶無耶になった過去を執念深く追う女を左幸子が演じている。私の好きな飢餓海峡と似た配役。「敵前逃亡の罪で死刑になった夫(丹波哲郎)」の最期を知るべく、当時の部下や上官を訪ね、死の理由に近づいてい>>続きを読む

東京画(1985年製作の映画)

3.8

昨年の秋、北鎌倉を訪ねた。川喜多映画記念館も良かったし小津のお墓もおお…という感じだったけれど、一番印象に残ったのは北鎌倉駅だった。周囲に高い建物がなく、妙に真っ直ぐな木が山の裾野から降りている。抜け>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.2

答えのない曲の解釈に苦しむ今作には、どちらとも取れる表現が散りばめられており、鑑賞者によって印象は真逆になる。ラストシーンはアジア蔑視にも、西洋発祥のハイカルチャーに中指を突き立てる表現にも思える(中>>続きを読む

はなればなれに(1964年製作の映画)

3.9

遅刻して入ったらちょうど「遅刻した観客のために」のくだりだった。その後、劇中の主人公たちも英語教室に遅刻する。観客とキャラクター、映画と現実をシームレスを繋げる演出は、例えば音楽のオンオフによって役者>>続きを読む

ウィリーが凱旋するとき(1950年製作の映画)

4.3

街の英雄として徴兵されたのに地元の基地に配属され、実家や近所での肩身が狭くなっていく前半。堰を切ったように話が転がる後半。前半も後半も、同じ状況の反復→説明の省略による外しギャグとスピードアップを繰り>>続きを読む

香も高きケンタッキー(1925年製作の映画)

4.0

馬目線だけなのに「ストーリーがあるように見える」戦火の馬のような映画を想像していたが、割と人間パートもあり、馬はモノローグでガンガン心情を明かしており、普通の映画との折衷のような作りだった。馬のセリフ>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.1

ナチスやカトリックの横暴、追従する民衆の掌返しと暴力への熱狂。ファシズムを扱ってきたバーホーベンの作家性は、現代フランスが舞台の前作「ELLE」において「女性は女性でいろ」という社会からの同調圧力とし>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

3.7

普通に楽しいが私はこれからも1を延々と見ていきたい。2よりは好き。

1の息もつかせぬ畳み掛けやスースクの目に飛び込む場面のような、予想を超えた驚きに乏しく、潜入作戦を繰り返す展開が単調に思えた。特に
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荒野の女たち(1965年製作の映画)

4.2

中国に移住し、キリスト教布教のためのコミュニティを築いている女たち。宗教に縛られ、浮世離れした振る舞いを見せる彼らのもとに、医者の女(アン・バンクロフト)が加わる。彼女の合理的な思考、奔放な行動によっ>>続きを読む

サスペリア PART2 完全版(1975年製作の映画)

3.7

・話は大雑把だが一つ一つのディテールが強い。殺人のエグさ、緊張を煽る無音、赤い美術に、気の抜けた会話やコメディシーンが混ざる緩急。ゴブリンのご機嫌な音楽も乗っかって、不思議な恍惚感が生まれている。犯人>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.8

良質なお仕事映画でした。コミュニケーションで現実の壁を突き破り、作り手は死んでも魂を未来に残す。職人の準備に支えられた演技が世界を変える、すなわち映画を撮ることと、過去の仕事人の矜持を重ねる手法は、や>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

アカデミー賞のお墨付きのせいか「ポリコレ」「家族主義の押し付け」と左右双方から叩かれ、既視感ある設定や忙しない映像は映画ファンからも叩かれている。実際隙の多い映画だ。

万人にウケる映画ではないし、ア
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.0

知人に勧められた去年のBLACKSUNはツッコミながら楽しく見たものの(テレレレー)、仮面ライダーへの思い入れは全然ないので、良くも悪くも変わらない庵野実写映画という印象でした。キューティーハニーみた>>続きを読む

仮面ライダー対ショッカー(1972年製作の映画)

3.2

公式YouTubeで公開中。ロウソクの火を消そうとしたらケーキが炎上して怪人に襲われる流れは、テンポも良いしホラー風味で良かった。

崖の上に並んだ怪人が1人ずつ名乗る場面がめっちゃ可愛いし、帰れと言
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.3

怪作にして快作!クソ長い感想です。

▽トニー・クシュナーが描くもの
クシュナー脚本は二項対立の「衝突」をモチーフとした「物体の離散と集合」を描く。

ミュンヘンではイスラエルとパレスチナの報復合戦を
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ラストエンペラー(1987年製作の映画)

4.3

見る人が支配する。皇帝は畏れ多く、庶民が目を合わせてはならない存在。幼少期のカメラ位置は低いが、成長に合わせて上から見下ろすショットが増えていく。

紫禁城に閉じ込められた溥儀は、上下の視点を持つ一方
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続・激突!/カージャック(1974年製作の映画)

3.9

全く無軌道だ。ズンドコ犯罪紀行。なめらかに罪を重ね、おおらかに受け入れる市民たち。ヒッチコックと西部劇とニューシネマを引用しつつ、ジョーズ以降の新時代の娯楽性、スピルバーグらしさがこぼれ出ていて楽しい>>続きを読む

愛する時と死する時(1958年製作の映画)

4.1

捻れなき恋愛映画

傑作です。やっぱり一番好きな監督かもしれない。

第二次大戦中、ドイツ兵の青年が3週間だけ独ソ戦線から帰郷する。空襲で荒廃した街で両親を探しながら、偶然出会った女性と恋に落ちるが…
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A.I.(2001年製作の映画)

3.8

昔テレビで途切れ途切れに見て以来。カミンスキーのビカビカの撮影がおとぎ話のようなトーンと噛み合っている。テンポも抜群。2時間20分退屈せず、話に夢中で映像に目を向ける余裕がなかった。だらだら書きます。>>続きを読む

キートンの船出/漂流(1921年製作の映画)

3.5

パブリックドメインなのでどこでも見られる。船内が丸ごと回転してのドタバタが楽しい。アステアやキューブリック、インセプションの先駆け?

トム・ダーディスが書いたキートンの研究本を最近買って読んでいる。
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ハロウィン(1978年製作の映画)

3.7

短評。オープニングの長回し、私が見ているのは主観なのか、客観なのか。襲う側なのか、襲われる側なのか。両者の間で揺らぐ視点をジャンプスケア演出に生かす。

・セックスした奴が死ぬ一方、モテない女子高生は
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ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ(1953年製作の映画)

4.0

エドウッドの珍作「プラン9・フロム・アウター・スペース」の冒頭、老人がフレームアウトした後に車のブレーキ音が入り、彼が事故死したっぽいことを示す場面がある。編集の間の取り方がどうしようもなく下手なので>>続きを読む

蛇の穴(1948年製作の映画)

3.9

精神病院で治療を受けながら、主人公のトラウマが解き明かされるニューロティックスリラー。オリヴィア・デ・ハヴィランドの熱演を含めてよく出来ているのだが、今作には症状の重い病棟に行く度に個性的な患者に出迎>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

3.8

ワクチンの副反応でぼーっとしつつレッドブルがぶ飲みしながら見たのでストーリーが曖昧なのだけど、ファシズムについての映画ではない?最後の暗殺シーン、ファシズムの冷酷さというよりは「中途半端な男が最悪に残>>続きを読む

ミュンヘン(2005年製作の映画)

3.9

ロッド国際空港が名前付きで強調されている。岡本公三らが空港で26人を殺した乱射事件の数ヶ月後、当局に拘束された岡本らの解放を求めて起きたのが、今作の描くミュンヘン五輪事件だ。昨年、重信房子の出所を喜ぶ>>続きを読む

太陽の帝国(1987年製作の映画)

3.7

攻撃する米軍、攻撃される日本軍、巻き込まれる英国人、三者の立場を同時に描く「戦場にかける橋」のような作品だ。デヴィッド・リーンが監督する話もあったらしい。

この映画は分かりにくい。戦場にかける橋は三
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モンティ・パイソン/人生狂騒曲(1983年製作の映画)

3.3

歴史に残る下品さだとバビロンが盛り上がっているようなので、自分が知る中で最も下品なトラウマ映画を久々に見返した。

メンバーが全員揃った劇場版としては最終作となる。スケッチ(コント)を並べて何となく話
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ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

3.7

順当にステップアップしていて嬉しい。「よくわからない昔の人々」に没入させ、逆説的に現代性を立ち上げる。目に見えて予算が増えた新作でも、ロバート・エガースの作家性は変わらなかった。

「ウィッチ」「ライ
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バビロン(2021年製作の映画)

3.1

今まで好意的に見てきたのだけど、チャゼルの悪いところが出ていると思った。この映画が必要な人もいるのかもしれないが、私には関係のない内容でした。

映画の裏に流れる混沌、感情、技術、歴史。群盲象を評すと
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ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)

3.3

初のトーキー映画の題材が「ユダヤ人によるブラックフェイス(黒塗り)パフォーマンス」であることは、アメリカのエンタメ史を踏まえると非常に示唆的だ。歴史の話が多くなります。

(というのも、映画としてはち
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