花俟良王さんの映画レビュー・感想・評価

花俟良王

花俟良王

映画(936)
ドラマ(0)
アニメ(0)

フィリップ(2022年製作の映画)

4.0

途中までの「寂しい人妻を抱いた後で「思い上がるなよ」と吐き捨てるヤリチン復讐譚」のままエロと娯楽を増すことはできたろうが(きっと大衆誌レベルではその手の話もあったのだろうが)、そうはならない。

もし
>>続きを読む

マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

4.0

ネトフリ作品だが新文芸坐で観れて良かった。終盤の教会での長回しのマーラー演奏シーンは素晴らしく、クーパーの堂々たるバーンスタインぶりと音の迫力に息を呑んだ。

演者としても監督としてもクーパーは一流で
>>続きを読む

流転の地球 -太陽系脱出計画-(2023年製作の映画)

3.5

超大作感を堪能できる。CGも素晴らしく、ところどころ登場するガジェットもいい。

ネトフリで発表されてる前作は後日談らしく本作から観てもよいとのことだけど、個人的にはあまり入り込めなかった。単純に好み
>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

4.0

なんの文句もなく面白かった。
浅野いにおの原作も世界観も特に通ってこず、予備知識無しで観たのも良かった。なんなんだこのミクスチャー感は、とワクワクした。幾田りらちゃんもあのちゃんもびっくりするくらいハ
>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

観る人の経験により色々な見方ができる作品だと思う。決して目新しいテーマではないけれど、誰の立場であっても寄り添ってくれる優しさがいい。ラスト、素晴らしいワンカットを経ての涙。あれはもうオールマイティカ>>続きを読む

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

4.5

素晴らしい見応え。
何よりも19世紀の出来事に没頭させてくれる眼福。教会を始めとした場所のリアルな美しさと人物たちの衣裳、さらに聖職者たちの儀式や小道具の豊かさ。「再現」ではないかもしれないが、徹頭徹
>>続きを読む

あんのこと(2023年製作の映画)

4.5

辛い。なぜこのような映画を見なければいけないのか、とも思う。それでも目が離せなかった。

河合優実は社会の理不尽に潰されそうな人生を体現し、佐藤二朗は面目躍如の圧倒的な説得力、そして中盤まで気が付かな
>>続きを読む

告白 コンフェッション(2024年製作の映画)

3.5

まず70分台というのがいい。余計なものがない。クライマックスの怒涛の展開もいい。

その分、終盤以外は凡庸に感じてしまった。ヤン・イクチュンの演技は良いのだけど、韓国人留学生という設定の必要性が感じら
>>続きを読む

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ(2022年製作の映画)

3.5

映画でも度々描かれる悪名高きグアンタナモ収容所。旅行中にタリバンの疑いで拘束された息子を取り戻そうとする母を中心としたお話。普通ならシリアス一辺倒になりそうだけど、お母さんが肝っ玉というか、空気を読め>>続きを読む

No.10(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

人を食った映画だがかなり楽しめた。一体何処に着地するのかという不安と期待、そして着地してからの心地良い混乱がいい。

一応の筋は通っているが、毛色の異なる印象的なシーンだけを先に置いてから筋を通し肉付
>>続きを読む

リンダはチキンがたべたい!(2023年製作の映画)

4.0

線を極力排し色で表現する独特の手法が鮮やか。
子供向けとして作られたそうだけど、まるでコメディ版『レ・ミゼラブル』(2020年の現代劇の方)のような拡がりとアナーキーさ。さすがフランスというべきか。こ
>>続きを読む

ジョン・レノン 失われた週末(2022年製作の映画)

4.0

かなり引き込まれた。泣きそうにすらなった。

これまでも語られているヨーコとの別居期間だが、ここまで詳細が描かれるのは初めてなのでは?ビートルズだけでなく、ロックファンならワクワクして見れるはず。
>>続きを読む

貴公子(2023年製作の映画)

4.0

アクションでグイグイもってくタイプかと思ったら、大企業創業者の遺産を巡るコンゲームの装い。主人公の善悪も分からない。しかし中盤以降役者が揃うとギアが変わり壮絶なバイオレンスと二転三転の物語を堪能。あま>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

相変わらずノーランは時間を描く、というか時間に囚われている。時系列がインセプションのような入れ子構造で理解するのに時間がかかるし全部理解できていないと思う(特に後半)。しかしいつものように大仰な音楽で>>続きを読む

春画先生(2023年製作の映画)

3.5

ポスタービジュアルからは健全な話を想像したけれど、かなり振り切った大人の艶笑譚だった。そのタッチに最初こそ戸惑ったものの、次第に大仰な語り口を楽しめるようになり、エンドマークの出方には声を出して笑った>>続きを読む

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

4.0

「暗闇では見える」盲人の巻き込まれ方シチュエーションサスペンス。評判に違わず面白かった。脚本の良さはもちろんだけど、BSで流れてる韓流時代劇とは一線を画す重厚な美術が素晴らしく、一時も飽きなかった。そ>>続きを読む

胸騒ぎ(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

胸糞悪いけしからん映画としてはかなりよくできていると思う。あとは好み。金と時間を使ってこんな気持ちになりたいかという。ハネケやアリ・アスターが好きなら大丈夫でしょう。

主人公たちの態度がモヤモヤさせ
>>続きを読む

『越後奥三面―山に生かされた日々』デジタルリマスター版(2023年製作の映画)

4.0

映画としての間口は狭いが見応えはあった。

そもそも映画は「記録」をするものだが、「ダムの底に消えいく生活を残す」という確固とした想いのもと密着したものはやはり強度が違う。朴訥なナレーションもいい。
>>続きを読む

倭文(しづり) 旅するカジの木(2024年製作の映画)

3.5

実直だ。近年はサイドストーリーや想定外の展開で心を動かすドキュメンタリーが増えたが、本作は地味な対象にひたすら向き合うストロングスタイル。私はたまたまテーマに興味を持ったのでフムフムと面白く観たが、間>>続きを読む

FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)

4.0

これはかなり混乱する作品だ。
貧乏な被害者家族が裕福な加害者家族の家で住み込みで働く。宣伝でもそうなってるがサスペンス要素は多分にある。だけどそういう展開にはならない。ある意味ハッピーエンドで、ある意
>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.0

まず物語が面白い。どう転ぶか分からないスリルがあった。特異で良質な短編小説を読んでるようだ。
そして父親譲りの人体損壊もいい。これまでブランドンの変態性は「模倣」や周囲の期待への「義務」なのかと思って
>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

バズ・ラーマンの『エルヴィス』だけではなく、こちらも見てようやく全体像が見えてくるエルヴィス像。本作だけ見るとエルヴィスはただのモラハラ男なのだが、ソフィア・コッポラはあの作品を容認できなかったのだろ>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

なぜベッソンの映画はこうも引き込まれないのだろう?同じ中学生の思いつきのような映画を作るシャマランはそれなりに楽しめるのに。

「足の不自由な自分の代わりに犬を操れれば凄いだろうなあ」という着眼点だけ
>>続きを読む

成功したオタク(2021年製作の映画)

4.0

元々行動派だったんだろうけど21歳で悩みを映画にし完成させるのは凄いし、居ても立っても居られないその気持ちはとても分かる。

面白かったし興味深かった。特に記事を書いた記者を引っ張り出し、元大統領信者
>>続きを読む

ビニールハウス(2022年製作の映画)

4.0

どん底過ぎて痛快です。
負のスパイラルを変に社会派ぶらずにサスペンスフルに見せてくれるのがいい。作り手の独りよがりでもなく、あくまで観客を引き込もうとする娯楽作。ここが重要。
こういう人生もあるだろう
>>続きを読む

光を見つける ヴァイオリニスト穴澤雄介からのメッセージ(2022年製作の映画)

3.5

映画としての見せ方にこだわらず、テレビ的な分かりやすさに重きを置いている。映画芸術を見せるのではなく、老若男女に届けるべきなのだからそれでいいと思う。
自分でも言っているがアナちゃんは天才肌ではなく努
>>続きを読む

無名(2023年製作の映画)

4.5

いやー、面白かった。話を完全に理解できてないのだが、それでもかっこいいし、切ないし、豪華で美しい。虜になった。「俺達の『裏切りのサーカス』を作るぞ」という作り手の気合いが伝わるし、空回りしていない。>>続きを読む

悪魔がはらわたでいけにえで私(2023年製作の映画)

4.0

タイトルを名作のパロディにしている作品は(本当のところは知る由もないけど)志の低さと思えてしまい好きではないのだけど、本作は結果的に非常に納得のいくタイトルだった…

60分という尺でやり尽くす潔さ。
>>続きを読む

犯罪都市 NO WAY OUT(2023年製作の映画)

4.0

悪を拳で裁くのが困難な時代になったが、なんとかマブリーには悪人を殴り続けてほしい。漫画のようにパンチを受けて悪人がビューンと飛んでいくのは精神衛生上大変よろしい。
このシリーズはワンパターンでいいと思
>>続きを読む

ハンテッド 狩られる夜(2023年製作の映画)

3.5

アジャ+カルフンということでかなりエグいのかと期待したけど、誰が観てもハラハラできるよう手堅くまとまった印象。もちろん余裕で及第点クリアなのでどこに出しても恥ずかしくない。でもこの二人ならもっと尖って>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.5

アニメで音楽のエモーションをどこまで出せるのか懐疑的だったが、縦横無尽な「アニメでしかできない表現」により、ただでさえ素晴らしい音楽が(相当な苦労によって)魅力を増殖させて胸に迫ってきた。ただし、それ>>続きを読む

キルボット(1986年製作の映画)

3.5

普段大作映画しか観ない人からは鼻で笑われてしまうかもだけど、ある程度B級映画を観ている人にとってはかなり上ランクになるはず。
ロボコップやターミネーターからは逃げられないけど、こいつからは逃げられるだ
>>続きを読む

パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼(1979年製作の映画)

3.0

オリジナリティはないけど色々てんこ盛りでイタリアB級映画を安心して享受できる。タイトルに偽りはないのだけど、ワニ君がもう少しぐっときてほしかった。

ドクター・モリスの島 フィッシュマン(1979年製作の映画)

3.5

Dr.モロー系の半魚人プログラムピクチャー。これですべてが言い表せてしまうし、文句も出ない。いや、文句どころか半魚人の造形などは魅力的。この手の作品は往年の吹替で見ると味わい深いですね。

>|