花俟良王さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

花俟良王

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エルヴィス(2022年製作の映画)

4.5

悪名高きパーカー大佐目線で語られる不世出のスター。ラーマン一流のスタイルで深化し継承される、眼福と高揚と哀切の159分の伝説。

彼の音楽の特異性をあえてデフォルメし、抑圧された女性たちが「目覚める」
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ボイリング・ポイント/沸騰(2021年製作の映画)

3.5

いやー、見入ってしまいました。

レストランの一夜の狂騒というと『ディナーラッシュ』が浮かぶけど、こちらはワンカットで緊張感を煽るだけでなく現代社会が抱える様々な問題を凝縮。大変見応えありました。
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春原さんのうた(2021年製作の映画)

4.5

とても良かった。前作よりもストーリーが絞られた分、感情移入ができた。多くを語らない分、余白がある。その余白を自分で構築する喜びもいい。優しい映画でした。

以下は備忘を兼ねた私の勝手な解釈です。正解は
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オフィサー・アンド・スパイ(2019年製作の映画)

4.0

異様な緻密さで当時を再現し(ているように見える)、シーンごとにため息がでるが、当然安易なカタルシスには目もくれない。

熟練の手腕で事実を積み重ね、ユダヤ系としての自らの怒りも静かに添えていく老境に達
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流浪の月(2022年製作の映画)

4.0

センシティブな内容だ。立場や経験によって評価は違うだろう。私は好みではなかった。ただし相変わらずエキストラ含めキャスト全員が作品の中に生きているのが李作品の凄さ。広瀬すずの中盤の独白と受ける松坂桃李は>>続きを読む

キャメラを止めるな!(2022年製作の映画)

3.5

ロマン・デュリスら売れっ子を起用しつつも余計な改変はせずひたすら原典リスペクト。

分かっちゃいるけど笑っちゃう。どんぐりさんも相変わらずいい味出してます。

これを機にさらに世界に拡がるといいですね
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シチリアを征服したクマ王国の物語(2019年製作の映画)

4.0

柄本佑、伊藤沙莉の吹替版で。良かった。クマが木彫り調でかわいい。

原作は 1945 年出版。同時期に書かれていた『指輪物語』とも共鳴し、権力の危うさを問う。枯れないメッセージ。アニメーション自体は逆
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バニシング:未解決事件(2022年製作の映画)

3.5

『譜めくりの女』のドゥニ・デルクール監督による仏韓合作なので、重厚でウェットな韓国サスペンスとは一味違う面白さ。

様々な人物の事情と思惑をバランスよくこのご時世88分(!)でまとめる潔さよ。

ホン
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帰らない日曜日(2021年製作の映画)

3.5

徹頭徹尾メロドラマだけど監督は『バハールの涙』のエヴァ・ウッソン。やはり戦争と女性が描かれる。

そして撮影時22歳のオデッサ・ヤングが無理なく40代まで演じ圧巻だ。

美しい撮影と美術、攻めた編集と
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FLEE フリー(2021年製作の映画)

4.0

a-haを聴きヴァン・ダムに憧れていた少年の過酷過ぎる難民生活と性の戸惑い。2つの柱が無理なく語られ、泣けた。

凄惨な実話のアニメ化は定着しつつあるけど、本作はインタビュー段階からアニメを用いて自由
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アンデス、ふたりぼっち(2017年製作の映画)

3.5

鑑賞前は「辛いこともあるけど大自然の中で私達仲良く生きてます」的なものを想像したのだけど、観始めたら老夫婦の受難、受難、また受難!

ドキュメンタリーではなく現地の言葉で撮られた初の劇映画。これは意図
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ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行(2021年製作の映画)

3.5

権利処理の手間を考えると目まいがするほど矢継早に紹介される21世紀の世界の映画たち。

シリアスな2部構成167分は正直かなり長いけど、こんな映画があってもいいさ。

貪欲に映画を吸収したい若者にはぜ
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マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

3.5

弾圧前に花開いたチェコ・ヌーヴェルヴァーグ「黄金の60年代」の大作。

敷居はかなり高いけど(事前にあらすじ読むことをお勧めします)、166分、時代に後押しされた映画作家の才能と野心を堪能。

シネス
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ニューオーダー(2020年製作の映画)

4.0

ディストピアに違いないのに、すぐそこにある現実と重なる恐怖。そして現実は無慈悲であるという正論の恐怖。

そんな絶望的な内容なのに緊張感とともに食い入るように見てしまう。

賛否両論だろうが様々な映画
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テレビで会えない芸人(2021年製作の映画)

4.0

松元ヒロとその笑いを知らない人はもちろん、YouTubeで活動したい若き芸人さんには是非見てほしい。

「過激」ではなく弱者の立場からモノを言う。テレビで放送できない「毒」の根底にあるのは優しさだ。
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ビリーバーズ(2022年製作の映画)

3.5

新興宗教の孤島プログラムに参加中の3人の揺らぎ。

山本直樹原作、城定秀夫監督、曽我部恵一音楽、という布陣に見る前から不安はなかったけど、主演3人の個性を活かし、職人のさじ加減でエロ過ぎ下品過ぎを回避
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不都合な理想の夫婦(2020年製作の映画)

4.0

タイトルだけでブラックコメディと思ったけど、笑う余地なし。その代わりにジュード・ロウのダメっぷりを堪能。

スリラーというには切実過ぎるが、作品全体のクオリティはすこぶる高く引き込まれた。前作未見だけ
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死刑にいたる病(2022年製作の映画)

4.0

白石和彌監督が磐石に整えた異常犯罪空間の中で静かに、しかし水を得た魚のようにサイコパスを演じる阿部サダヲがいい。

ジメジメと情に訴えずテンポを優先したラストも称賛したい。

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性(2012年製作の映画)

4.5

とても良かった。10年前の作品だが、俳優や監督たちの彼女への思いと感謝は変わっていないだろう。

特に70年代の名作群への関わりは尋常ではない。ジョン・ヴォイト、ジェフ・ブリッジスらの「セカンドチャン
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a-ha THE MOVIE(2021年製作の映画)

3.5

冒頭いきなりのおぼんこぼん状態にビビるが、仲が悪い訳ではないということが解ってくる。

なぜやめないのかという大人視点で見ると興味深い。「take on me」の呪縛はあるが、現役のスタジアムグループ
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ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)

4.0

少し構えて観始めたが、とっつきやすく王道味すら感じる思春期ホラーとして楽しめた。

主人公の少女は魅力的だし、早い段階からクリーチャーが活躍するのもいい。

ジュリア・デュクルノーもそうだけど、新たな
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バーニング・ダウン 爆発都市(2020年製作の映画)

4.0

景気のいい映画を見たければこれ!たくさん爆発するぞ!

「そろそろクライマックスだな」と思ったらまだ50分しか経ってない展開と見せ場のスシ詰め状態。

「その記憶喪失いる?」とか思ってはいけない。職人
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夜を走る(2021年製作の映画)

4.5

大変な力作だった。

『教誨師』の佐向大監督のオリジナル脚本は、人物の向こうに業が見える。他人事なのに自分のことのようで目が離せない。

幅広い顔を見せた哀しくも可笑しい主人公、足立智充が魅力的だった
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エコー・イン・ザ・キャニオン(2018年製作の映画)

3.5

直前公開の『ローレル・キャニオン』ではウエストコーストロックの歴史が俯瞰して語られたけど、本作はディランの息子ジェイコブが主催した豪華トリビュートライブが主軸。

遂にブライアンも登場するけど、この2
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英雄の証明(2021年製作の映画)

4.0

あえて描写(人物や語りそのもの)に一分の隙を与え、次で埋める。この連続で隙のない作品とするファルハディの冷静な手腕を大いに堪能。

スマホ画面をほぼ見せずにSNSを描く姿勢に感動を覚えた。あと「髭を整
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山歌(2022年製作の映画)

3.5

予算もスケジュールも潤沢ではないだろうに、この現代に山窩(さんか)を描く、という心意気は買いたい。

しかし、サンカの描写も物語もダイジェスト版を見てるようで物足りない。

それでも山は美しく、消えて
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アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ(2021年製作の映画)

3.0

ライトなエロコメではなくベルリン金熊も納得な異様作。コロナ禍の街を彷徨うヴァルダのような第一部からゴダール臭漂う二部、そしてマルチエンディング(笑)の三部構成の人を喰った作品。重要な性描写は自主規制で>>続きを読む

チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー(2020年製作の映画)

4.0

政府に虐待された後、家族の手で殺される(そう仕向けられる)同性愛者達。現代の話だ。

彼らを救う活動家たちを緊張感と共に描く骨太なドキュメンタリー。「我が国にゲイは存在しない」と言い切る首長は今、ロシ
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シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)

4.0

『シャドウ・イン・クラウド』。…これは揉めるぞ…(笑)。トロント映画祭の「深夜」にバカ受けしたというのがミソ。私は当然「賛」です。シチュエーションが大渋滞の後半は異常過ぎて困惑の微笑みが絶えなかったけ>>続きを読む

ストレイ 犬が見た世界(2020年製作の映画)

3.5

殺処分ゼロとのことでイスタンブールの野良犬は物怖じしない。人々も無駄に媚びず、威嚇せず、共に暮らす。フラットになって見えてくるものの記録だ。数年前の秀作『猫が教えてくれたこと』も同地で撮影されているは>>続きを読む

麻希のいる世界(2022年製作の映画)

4.0

凄かった。

そこに辿り着くために、それに触れるために、削ぎ落とされ、捧げられていく人生。

主演二人と窪塚愛流は演劇的なアプローチでこの異常なハードボイルド空間を形成。『さよならくちびる』の脇役だっ
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猿ノ王国(2021年製作の映画)

4.0

『半狂乱』でどっと疲れた記憶も新しい藤井秀剛監督の新作。コロナ禍を逆手に取った内容で(マスクの使い方が秀逸!)、日本の責任逃れ体質をあのハイテンポ不穏血まみれ超展開でエグる。過去作に違わず緻密な構成に>>続きを読む

TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.5

監督のイマジネーションに追いつけないこの快感。観る者を選びまくる潔さ。

『クラッシュ』はもちろんクローネンバーグ全般の物質的な「変態」を想起させるが、前作『RAW』で垣間見せた父性が大胆に描かれてい
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スージーQ(2019年製作の映画)

4.0

後追いで聴いてきた私はこの人を作られたカリスマだと誤解していた。

姉妹・家族との葛藤や何よりここまで卓越したベーシストだということも知らなかった。

狂騒のあの時代に酒と薬とセックスから距離を置き、
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

3.5

個人的にはとても苦手な映画だ。実際の銃乱射事件を扱っているのだから当然か。先んじた『エレファント』という傑作がある中、それでも映画として孤高の強度を感じた。絶賛する人に何の異論もない。ケイレブ君はもち>>続きを読む

ガンパウダー・ミルクシェイク(2021年製作の映画)

3.5

ジョン・ウィック的な殺し屋ファンタジー世界が、さらにケレン味増し増しに。新鮮さの欠片もなく突っ込みどころも多数だけど、光と色で丁寧に作り込まれたポップな嘘を楽しんだ。それでいいのだ(首チョンパもあるし>>続きを読む